山田方谷とローカル経済の再生

NHKが江戸末期の備中松山藩5万石の財政を立て直した山田方谷を紹介した。
傑出した人物である。

1)藩の実収入が1万9千石しかないことを明らかにし、大阪の金貸しに交渉して50年の返済猶予を得る。藩の財政が豊かになって数年で返済完了してしまう。
2)大阪の堂島米会所からコメを引き上げて領内に置き、いざという時のコメがあることで領民を安心させる
3)質素倹約を命じて上級武士も下級武士並みの生活を送るよう命じ、賄賂や接待を受けたものからは没収した
4)価値が著しく落ちていた藩札を集めて公衆の前で焼き捨てた。代わりに新しい藩札を発行して藩に兌換を義務付け、これが藩札の信用度を増して他国の資金が流入するようになった
5)砂鉄から備中鍬を生産し、タバコや茶・和紙・柚餅子などの特産品を開発して、生産者に稼ぎがあるようにした
6)特産品を藩の蒸気艦船「快風丸」で直接江戸に運び、艦船の操練をしつつ、江戸の商人に直接販売することで中間コストを抑え利益を多くした。
等々
金融改革、産業育成、財政健全化、さらには目安箱、屯田制度、農兵制度、英国式軍隊設立と次々と革新を断行した、名参謀であり、軍略家でもあった。
筆者の見るところマーケティングの才覚も鋭い。
若いころ陽明学を学び哲学・思想が根底にある。
方谷は反対意見を受けたもののあくまで藩主・家臣が儲けるための政策ではなく、藩全体で利益を共有して藩の主要な構成員たる領民にそれを最大限に還元するための手段であるとして、この批判を一顧だにしなかったという。
(以上Wikipediaから引用)

★根本的な哲学・思想
目先の技術だけを検討していても、根底的な哲学・思想がぶれていては財政再建も経済再建、人口再生産もかなわない。
農民出身の山田方谷には根本的に揺るがない思想があった。
至誠惻怛(しせいそくだつ)と士民撫育
さらにことに当たる根本的な態度として師から伝えられた「盡己(じんき)」がある。

<日経BizGate記事からの引用>
伝教大師・最澄の言葉に「一隅を照らす 此れ即ち国宝なり」というものがある。「天台法華宗年分学生式」(いわゆる「山家学生式」)に出典のある言葉だ。
 「山家学生式」は、最澄が日本の天台宗を開くに際し、人々を幸福へと導くために「一隅を照らす国宝的人材」を養成したいと情熱を込めて執筆したという。一隅(いちぐう)とは、今、自分(あるいは、あなた)がいる、その場所そのもののことである。だから、「一隅を照らす」とは、自分が、自分の置かれている場所や立場で、その場所・立場を、あらん限りの誠を尽くして照らすということだ。自分が光れば、自分の周囲も光る。ひいては、村も町も国(藩)も光る、という意である。だからこそ、「盡己照隅」が大切なのだ。
<引用終わり>

こういう人物こそ、今の地方自治に必要なのではないか、
あるいは国政にこそ必要なのかもしれない。
揺るがない藩士のためでなく藩のためであり、藩の領民が最大の受益者となる改革を、という哲学・思想がない限り、これだけ激しい改革は受け入れられず進められなかっただろう。
ハーバードでMBAをとっても山田方谷を知らなければ国を変えることはできないだろう。
日本の新しい「大学」の学部2年間で学ぶべき哲学はジョン・ロックだけではない。山田方谷を学ばなくして何ができよう
日経BizGateに全6回の特集がある。
Wikipediaよりはこれを読むほうがいい。
http://bizgate.nikkei.co.jp/series/006990/index.html


刹那的な、目先の、その場しのぎの改革では人はついてこない。

山田方谷のような人物こそ必要だが、そういう人物が出ないのは、地方が国から縛られすぎていることにも原因があると考える。
地方交付税さえもらっていれば何とかなる。各省庁から言われる通りの仕事(借金)さえしていれば国が責任を持ってくれる、そういう依存体質が、地方財政政策、産業政策の自立意識をなくしているのではないか?

国からの交付税は用途の縛りを外して好きに使わせる必要がある。
頭を使った自治体だけが少子高齢化対策に成功し、若い働き手の流出を防ぎ、地方財政の立て直しに成功する。
頭の悪い自治体もそれを見習って動く、そういう流れが正しいだろう。


教育に関して言えば、地方の大学、国立の大学はこのような人物を育成してこそ大学としての価値がある。


ローカル経済について
日本経済の70%はローカル経済
経営コンサルタントの富山氏によると、日本経済の70%はローカル経済であり、グローバル経済の産業を経済成長させても波及効果は小さく、70%を占めるローカル経済をテコ入れしなければ日本全体の経済成長→財政赤字縮小とはならないという。

3次産業の空洞化で製造業の地方工場は工賃の安い海外に出て行ってしまい、そうした意味でもトヨタなどの大企業の業績が地方に波及するトリクルダウンは期待できない。(そもそもトリクルダウンはただの妄想だったかもしれない)
そうなると、ローカル経済はローカル経済で独自に成長させていかないと、大企業の正規従業員との賃金格差も拡大していくかもしれない。

しかし、地方は都会に比べて準生産人口(15~64歳人口)の減少が激しい。若い人はどんどん都会に流出してしまい、高齢者比率が高くなり、マイナス成長な上に人手不足に陥っている。

ただし、ローカル経済と地方経済は似ているが概念が異なる。
大都会にもグローバル経済に強く関連していないローカル経済がある。

住民サービス(学校、警察、消防、上下水道、ごみ収集焼却、他)、公共交通、医療・福祉施設、宿泊施設などサービス業が大半を占め、公共工事(新規・補修)、外食産業、対面小売業、農林水産業などは全てローカル経済と呼ぶべきだろう。

セブンイレブンなどのコンビニ大手、マクドナルド・スターバックス・吉野家・ガストなどの外食大手、イトーヨーカドーなどの小売大手は全国で商品を標準化し、調達コストを下げるとともにブランド化に成功したもので、食品加工は一部グローバル化しているものの、商品自体が自動車やTV、スマホと異なりローカルなものと見なせる。
しかし、これら大企業は検討対象から外す。
いや、外食産業の企業は大手を含めて少子化の原因となるブラック企業なので、ブラック企業対策で対応を検討する。

大企業でないローカル経済の担い手たちをどうしていけばいいのか?
小生もコンサルとしてはまったく対象としてこなかったのがローカル経済だ。
ここは抜本的な改革が必要とされているはずだ。
人口減少と高齢化で地方経済が縮小すればするほど人材は都会に流出してしまい、負の悪循環が地方経済の縮小を加速化させ、手の打ちようがなくなる。

ただし、働き口さえあれば若者は地方に留まるというのが筆者の当面の仮説だ。
労働環境のいい地元の企業が募集していれば、地元に留まると期待する。

企業の規模化による価格交渉力強化と労働環境改善
地方のトラック・バスなどの輸送業、土木・建築業などの中小企業に対して資本金規制をかけて合併させ、企業規模を大きくする。価格交渉力をつけさせるとともに、技能研修を充実させ技能レベルを上げ、福利厚生を充実させて労働環境を改善する。これらにより若い人材を吸収できるようにする。
これを少子化対策の重要な柱と考えているが、この方策はローカル経済にとって有効なのだろうか?

人材は確保しやすくなるが、公共料金の運賃や公共事業の工賃は上がる。
自治体の少ない予算でできる道路、橋脚、トンネル、上下水道の補修はますます困難になるか?しかし所得が上がれば歳入は増えるのでは?
どうせなら医療・福祉施設、外食産業、宿泊を含む観光産業の人件費も上げ、全ての物価が上がるようにしてやれば、問題ないように思う。
ちょうどスイスが日本より物価が2.5倍高いが所得もそれだけ高いから問題がないように。

全ての人の所得が上がるわけではない。年金受給者の所得は変わらない。
年金制度が改革されればますます受給開始時期は遅くなり、受給額が減る。
地方でも都会でも、この人たちの食費、交通費、医療費を考えなければならない。
少子化対策としては、全ての人件費は上げていくべきだが、これが未解決の課題だ。
ただし、年金支給額の計算には物価スライド計算も入るので、激しい落ち込みにはならないと期待される。


農業はどうするべきだろうか?
中国人やベトナム人の人権を無視した研修制度に頼っている大規模経営は持続可能ではない。当の中国人やベトナム人は中間業者に何十万も払って日本に渡ってきているが、そんな稼ぎでは国に仕送りもできないと大量に脱走を図ったり時には殺人事件に発展している。彼らにとってなんの利点もないような制度は長続きしない。
かといって穫り頃の大根、キャベツを画像認識して自動で収穫するロボットはあと10年はできないだろう。
日本の気候では病害虫がつきやすく無農薬栽培は無理にしても、北海道の大農場や関東・東北の大規模水田以外は小規模畑作に頼らざるを得ないのではないか?
あるいは、輸送業、土木・建築業と同様大きな資本を積んで農業生産法人を作り、若い人を雇用する形態にして人材を確保するかだ。そうすると人件費の分だけ農産物価格は上がる(下手すれば2倍以上)が、持続可能な産業になり得る。
米作への補助はこれまで兼業農家への補助となってきたが、専業農家のみ補助することとし、抜本的に変革が必要だろう。
農協組織にも変革が必要だ。

農業生産の問題は経済に占める割合が小さいが、日本の経済政策上「食料自給率」の問題に直結するし、補助金の問題、輸入の問題、農協組織問題もあるので、簡単ではない。別途検討しなければならない。


★基本的な思想
現在までの筆者の基本的な思想は次のようになる。
経済政策を考えるとき、中心になる思想は<短期的利益の追求>パラダイムを避け、<次の世代の利益を優先>という考え方だ。 今の世代で資産、資本を喰い尽さずに、次の世代に引き渡していかねばならない。
急増する高齢者の医療費に資産、資本をつぎ込みすぎては次の世代の分がなくなってしまう。高齢者医療より若い世代の結婚・子育て支援を充実させるべきだ。

国の存続・継続が第一義である。
いや、人口減少を前提にした経済にすればいいではないか、経済成長などしなくてもいいではないか、という考え方もあるが、財政赤字をこれ以上増やすことは国際金融環境からして困難だ。
ただし、ギリシャ経済支援のためのEUやECBを通したドイツのやり方は間違っている。
経済再建を財政再建より優先すべきであり、ドイツや北欧諸国はこれ以上歳出削減を迫るべきではなく、債権放棄(債務免除)して負担を軽くしてやるべきだ。
日本も経済成長を優先すべきであり、消費税増税は後回しにしなければならない。
それが新古典主義・マネタリズムに代わる現代の主流派・新ケインズ経済学派流の考え方だ。

★一つの疑問
経済政策では少なくとも新古典派流、ケインズ流などバックボーンを持ちうるし、根本的な思想・哲学を持ち得る。
しかし、国家安全保障上の戦略となると、なんらかの思想を根底に置くべきだろうか?あるいはあくまで客観的な分析に基づいて冷徹に最善の戦略を取るべきだろうか?

従来、自分では客観的かつ冷徹に最善策を選択すべきと考えてきた。
しかし、国家間では感情的、歴史的な経緯を無視することはできないかもしれないとも思う。
例えば台湾だ。中国が台湾を制圧しようと動くとき、日本はどうすべきなのか?
台湾は必ずしも定義上は同盟国といえないが、実質的には韓国以上につながりが強い。
これを見捨てるのであれば、米国はいざという時日本を見捨てるということかもしれない。

外交・安全保障に関しては経済政策において必要な哲学・思想とは異なる根本思想があるのだろうか?
あるいはあくまでその時その時の最善手の選択なのだろうか?


申し訳ないが、ボストンコンサルティング出身の富永氏の本はつまらない。
コンサルタントの考え方は分かっているし、データさえあれば自分で考えるので、考えた結果には興味がないのだ。
その本を探していて別な本も買ったのだが、そっちは大変面白い。
孫崎享氏の「日本の『情報と外交』」だ。
表の外交と裏の動き。
Foreign Affairsの論文を読むのが米国のこれからの動きを読むには最もいい、ということが分かっただけでも収穫である。
実際数か月前から時々読んでいるのだが、これからは全て目を通していかなくてはいけないかもしれない。

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