日銀のマイナス金利政策の中身と影響範囲

日銀が1月の会合で5対4の僅差でマイナス金利政策を決定した。

いくつかの記事から整理してみると字面はかなりすごい事のように見えるが、影響範囲は限定的と言っていい。
デフレ対策としてほとんど効果がないが、本質はデフレ対策(金利差によるインフレ政策)だ。
副次効果として短期的に少量の円安効果が若干あり、その結果短期的な少量の株高があるかもしれないが、長期的に影響する内容ではない。


市中銀行は日銀などに預金をして金利を受け取るのでなく、企業に資金を貸出し、投資を促すのが本来やるべきことだ。
本来なら市中銀行が預けている日銀の当座預金の金利を全てマイナスにして、「日銀に預ける金があったらどんどん企業に貸し出せ」という態度をとるべきだろうが、現実問題として企業の設備投資意欲が低いため、借り手はいない。銀行は日銀からの受取金利2500億円が逆に支払うことになると、ただでさえ市中金利が低くて稼ぎがないために経営が破たんしかねない。
だからそこまではできない。
そこで日銀の当座預金(マネタリー・ベース)256兆円(16年1月22日)より増加する分に関してはマイナス金利にする、という穏やかなものにするというのが今回の決定事項だ。
マイナス金利の概念図
(日経新聞1月29日記事より)
画像


少なくとも日銀は2%のインフレ実現のためになんでもやるという態度を示すことには成功した、という見方がある。
(ただ、規模が小さく効果も小さい)
一方、保険や年金の運用益を減少させる可能性もある。

今日、中国に限らず、米国もEUも中央銀行の手詰まり感が大きい中、日銀はまだやれるということを示し、ETFの買い入れ枠増大や国債の買い入れ枠増大、購入する有価証券の範囲拡大といった次の手がいつかを市場関係者に考えさせ、この1カ月で大きく市場に広がった不安心理を、大きな売りにつなげにくくする効果があった、と見る見方もある。

この見方は以下の記事に見られるが、妥当だろう。
WEDGE REPORT 2016年01月30日(Sat)
日銀のマイナス金利導入の意味するもの
物価上昇へのコミット示す
ジョン太郎 (現役金融マン)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6023?google_editors_picks=true

もう一つの解説記事。

Money Voice 1月31日記事
日銀「マイナス金利」6つのポイント~円安を招くがデフレには効果なし
=吉田繁治
http://www.mag2.com/p/money/7247

この記事によれば、「マイナス金利の対象は預金の金利(世帯と企業のマネー・ストック)ではない。現状の当座預金では0.1%の付利のままとし、マイナス金利は、今より増えた当座預金にのみ適用」。市中銀行が日銀に預けている当座預金256兆円に対して日銀の準備金は5兆円程度。額が少ないので、市中銀行の預金の大半がマイナス金利になるわけではなく、銀行に貸し出しを強制してポートフォリオをリバランスする力はない。
ただ国債1年物-0.024%、2年物-0.026%、3年物-0.015%、4年物-0.003%、5年物+0.011%、7年物+0.033%、10年物0.229%、20年物0.834%と、5年物までマイナス金利になるので、銀行は国債を保有しているだけで金利がもらえるどころか金利を日銀にとられるため、国債を日銀に売ろうとすることになり、日銀の国債買い付けが加速する。

現実問題としてはこれまでの買い付けで既存の国債の大半はすでに市中銀行にはなく、日銀に集まっている。 
日銀は100万円の5年物の国債をもっていると5年後に5600円損をするはずだが、金利の支払先は日銀・自分自身。

EUは14年6月にユーロを0.1%のマイナス金利にして1ドル1.4Euから1.1Euと21%もユーロ安になったが、日銀の発表では円安は2%円安になっただけで、株価も300円(1.8%)上がっただけという限定的な反応だった。
円安効果・株高効果も限定的と予想される。
当然、デフレ対策としてはほとんど効果がない。

むしろ、EU、日本に追従して韓国以下の新興国が通貨安政策を打ち出してきたりすると、逆に「安全通貨」としての円が買われるようになって今年の後半にも円高が進行する事態も想定される。
この範囲で見るだけでは、当面大したリスクがないように見える。
国債の人気がなくなって入札不調になる可能性はあるが、無理やり銀行に買わせてすぐ巻き上げるというアラワザぐらい、金融庁がなんとでもするだろう。
外国投資家が日本国債に手を伸ばしかけていた局面でもあり、これは日銀の好判断だったかもしれない。


問題なのは別ブログで書いたように、中国元CHY売りが強まって中国通貨当局がそれを買い支えるために大量の米国債などを売りまくる事態だ。
今のところ金利がプラスになっている米国債は大人気で出たらすぐ買い手がつくが、米国の労働市場の好転が世界経済の減速に足を引っ張られておかしくならないとは言えない。

また米国の安全保障上、米国債が世界中にばら撒かれて状況次第ではいくらでも売られる状況になる、というのは好ましくないので、米国は中国に売るなと圧力を強めるだろう。
本来は日本の保有量を少し上回る大量の米国債を中国が持っていて、中国は、いざとなったら売るぞと脅しに使うはずだったのが、背に腹が代えられなくなってきたのだから、話が逆転している。
芸国の方の立場の方が強くなっている。
この辺が心配点だ。

中国が大量の外貨を持ちながら通貨を防衛できなくなって自滅するかもしれないし、その前振りとして米国債が世界中にばら撒かれるかもしれない。

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