EU 絵にかいた餅の終わり

英国がEU離脱を決めた。


投資筋は、EU離脱で英国は一流国から一流半ぐらいに没落する、ウォールストリートと同じぐらいのレベルだった金融街・シティーも没落する、といった論調だ。
世の中の仕組みを知らない「下流」が英国のEU離脱を主張 離脱すれば英国における格差は拡大し、ロンドンの金融街シティはパナマ化する
2016年06月19日20:34
Market Hack
http://markethack.net/archives/52012585.html
金融業界・投資筋に都合のいい「世の中の仕組み」とやらがUnbreakableだと思っていたら大間違いだ。

経済評論家連中は、EUとの無関税の取引ができた英国のメリットがなくなり、日本企業など海外企業が引き上げることで、経済力も5%以上落ちる、など悲観論だ。
日本のメディアもサンデーモーニングなどでは「EUはヨーロッパの政治の理想像だったのに」どと感傷的な失望が多くみられた。


しかし、それらの観測は本当か?
小生はEUを「理想像」などと考えていた連中はバカじゃないの?と言ってあげるしかない。

「理想像」はギリシャを救済せず破たんさせた時点で崩壊した
PIGSと呼ばれたポルトガル、アイスランド、ギリシャ、スペインは、財政危機になった時、ECB(EU中央銀行)が助けてくれないことを思い知った。イタリア、フランスも他人事ではなかったはずだ。
ギリシャの債務を少しも棒引きにしないというドイツの強硬な姿勢にはフランスは相当頭に来たはずだ。
域内貿易ではEUより価値の高いドイツが独り勝ちになっている。
その上にEUはただの経済同盟であって、財務は国別、しかも救済はしない、となったら弱い国が全部ドイツの言いなりになるだけのことで、いずれ各国はドイツ銀行に支配されてしまうだけだ。
それがギリシャ危機への対応ではっきりした。

もともとフランスはドイツに対して不信感を持っていたが、それを棚上げして一致協力してやっていこうと「理想論」に走った結果が、やっぱりドイツにしてやられただけだ。
大したメリットもなく「ドイツ帝国建国の捨て石にされる」という感覚になり、南欧諸国の国民感情としてはEUはもはや崩壊している。
エマニュエル・トッドでなくてもそう思うだろう。
ドイツの緊縮財政主義についていけるのは一部の中欧・北欧諸国だけで、南欧諸国にとっては国民の納得を得られるものではない。


小生が考えるに、EUはヨーロッパ各国が統一通貨を持つことでドル=米国による経済覇権に対抗しようとした寄せ集めの勢力=経済同盟にすぎない
ところが、シェンゲン条約(国境での人の流入の自由化)など政治的拘束力も持たせるようになって、思想的な統合まで目指すような姿勢が出てきたことからおかしくなってしまった。
中東諸国からの難民の流入に対しても、ドイツが一人正義を振り回して「毎月10万人の移民を各国に振り分ける」ようなことを主張したが、各国の国民は「これ以上は無理」という答えだ。
政治的に正しくても(ポリティカル・コレクト)、実現は不可能だ。
英国はたまたま国民投票のタイミングがあったので、経済のメリットか移民のデメリットか?という投票になった結果、移民のデメリットに対して国民がNOの判定を下したということだ。

反移民感情はポーランドの選挙にも影響し、政権は移民拒絶派に変わってしまっている。もともと移民に対して緩やかだったフランスやベルギー、オランダでも、パリのテロ以来雰囲気が変わってきて、移民排斥派政党が現政権を揺るがしている。
フランスはオランド政権がもう維持できなくなって交替する流れになっているらしい。
注)以下の記事参照
Reuter World | 2016年 06月 27日 10:37 JST
仏独、EU離脱決定後の英国への対応めぐり不協和音
http://jp.reuters.com/article/eu-britain-germany-france-idJPKCN0ZD02C


EUは『失敗した政治・経済上の壮大な実験』にすぎない
平等な統合にはドイツの経済力が強すぎたということだ。
理想なんてものはない。

米国の経済覇権に対して対抗軸を作る意味はあったが、「結束する」という打算は成立しなかった。
「ドイツ」に対する各国の「不信」が結果的にますます強まったのが最大の原因だろう。
対立軸は財政上の南北問題と、移民政策だ

普通に考えれば、ギリシャ危機にしろ移民大量流入問題にしろ、公平に議論して大半が満足する答えを出すべきだったが、ドイツは自分が正しいと譲らず、ドイツの正論を押しつけてきた。これが破たんの最大要因だ。加えて正論を振りかざした当のメルケルも、移民問題では国内から総スカンを食った。しかし、かの国ではそれがリーダーシップなのかもしれない。
しかし、こんな有様では経済同盟すら怪しくなるのが当たり前だ。


現状は、EUがギリシャ危機を乗り越えてはいず、大不況というほどではないにしても、いまだにドイツ以外はやや悪い景気情勢だ。
そして、ドイツはVW問題とドイツ銀行のギリシャ・中国への巨額債権問題を抱え、悪くなる要素が非常に大きい。
ECBもギリシャは救わない一方でVWやドイツ銀行を救うという行動は許されないだろう。

EUという壮大な実験も終わりが見えてきたところなのではないか?



6月29日追記)
どのマスコミも英国は愚衆政治に陥ってEU離脱などとバカなことをした、といった間抜けな記事ばかり乗せているが、エコノミスト系にも意味が分かっている人はいた。

イギリス国民を「EU離脱」に追い込んだ、欧州連合とECBの自業自得
=矢口新
MoneyVoice 2016年6月24日
http://www.mag2.com/p/money/15957

リーマンショック時、ECBはドイツを優先し、ドイツのインフレ懸念のために利上げした。
この時、震源地の米国FRBは3.25%もの利下げをし、英国中央銀行は自身の住宅バブルを抑えるべく0.7%利下げしている。アイルランドやスペインにも住宅バブルがあったが、そのさなかに利上げされてしまっては事態は明らかに悪化する。
ECBはドイツを優先し、ドイツのインフレ懸念のために利上げした。
ECBはドイツの事情を最優先した金融政策を行っている、と断言できるところだ。
矢口氏はECBの恥知らずな「ドイツびいき」と書いているが、その通りだろう。

米国FRB、ECB、英国BOE、日本BOJの政策金利推移
画像


その効果で、2007年以前には最も失業率の高かったドイツが、2009年以降は最も低くなった。
その結果、失業率を見ると、ドイツだけが下がり、他の国はみんな二けた台まで押し上げられてしまった。

ユーロ圏主要国の失業率の推移
画像


ドイツ以外の各国は対策として財政出動して何とか景気を浮揚させようとした。
その結果、アイルランド、スペインといった財政黒字だった国も赤字化してしまった。
画像


リーマンショック直後の金利の「上げ」さえなければここまでひどくはならなかったかもしれない。

こういう事態になっても、ドイツは完全統合のための条件として財政赤字は3%以内に収めること、なぞといってふんぞり返っているわけだ。

英国は通貨危機以降EUにも通貨統合させてもらえない不遇をかこっていたが、もしも通貨統合していたら、もっとひどい目に合っていただろう。

小生から見れば、目先の経済的メリットだけで判断している政治家、エコノミスト、経営者あるいは若いEU残留派の方が本質を見ていない、としか言いようがない。
日本でいえば中央銀行がソウルにあったり、国会が北京にあるようなものだという例えが感心されていたが、
中央銀行の金利政策は景気過熱の冷却には必要不可欠の政策手段である。
実態として経済状況の異なる「よその国の事情」に合わせて金利が決定されるということは恐ろしいことだ。
ましてそれが常にドイツ中心に決めらているにもかかわらず、文句も言わず緊縮財政でついてくるフランス、イタリアの政治家連中が異常であり、国民に対する背信行為のように思えるだが?

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