欧州でようやくピークアウトが見えてきたが、米国では今後がヤマ

 新型コロナウィルスによる死亡率は国や地域によって大きく異なる。
 「医療へのアクセス」とよく言われるものは何だろう。国民皆保険などの制度も重要だが、医師・看護師の数、専門病院の病床の数、マスク・防護服の在庫数、最適な医薬品の在庫数、酸素吸入器・人工呼吸器・ICUといった設備の数、病院自体の消毒体制、これらの多い少ないが問題となる。感染者数が少ない時点ではこれらの差は影響しないが、感染者数が増大してくると大きな違いが出てくる。

 次の表は感染者の多い先進国と米国、中国の4月3日時点の状況を表したもの。
4月3日時点の死亡率 World USA.png
1.ヨーロッパの状況
 WHOはこの疫病の致死率を1%程度としたが、死亡率は国や地域の実情と状況で全く異なっている。
死亡率5%以上をピンク色で示したが、これらは十分な医療アクセスが期待できる国だったが、感染者が多すぎて医療崩壊を起こしたと考えられる。濃いピンクのイタリア、スペイン、フランス、英国、オランダは特に悲惨な状況だ。Worldometerの4月2日についた注釈によればフランスでは800人超の介護施設での死者がカウントされていないが、カウントされるべきとしている。EU主要国はドイツ以外壊滅的な状況だ。
 ドイツはさすが医療先進国だけある。都市封鎖、外出禁止が効果を上げているらしく、実感染者(感染者数から退院数、死亡数を引いた、入院又は隔離の実質的な対象者数)の増加率を見るとあと4日ほどでピークアウトを迎えることができそうなほど増加率が落ちてきている。
 次図は欧州各国の直近の実感染者増加率(5日間の移動平均)を見たもの。
4月3日時点の欧州の実感染者増加率.png
 ドイツは直近のわずか4日間で10%から5%まで増加率が落ちてきているので、このままいけばあと4日程度で増加率がマイナスに転じる可能性がある。増加率がマイナスに転じるという事は実感染者数が減少し始めるということで、これをピークアウトという。スイスもドイツとほぼ同じ傾きで増加率が減少しており、あと4日程度でピークアウトできるかもしれない。ピークアウトまであとわずかなのは、感染の爆発を何故か防げたデンマークも同じだ。4月2日、3日と2日続けて増加率1%台となっている。スペインもあと数日でピークアウトが見えてきそうだ。
 地獄の日々が続いているイタリアは10%から5%までに8日かかっていたが、あと4-5日で増加率がマイナスに転ずると期待できる。3600人の医師が感染し、46人の医師が亡くなったという報道を3、4日前に目にしたが、国民にも多くの犠牲を払ってきた。このような悲劇を生んだのはイタリアの財政がEU(北側諸国)に縛られて、赤字削減のために病院を削り、医師・看護師を削ったためであり、また経済を中国に依存したためだ。フランス、スペイン、ドイツなどあらゆるEU諸国にイタリアからたちまち感染者が伝播したのも、EUのシェンゲン条約の呪縛によるものだった。筆者の考えではEU・一つの市場などという概念は「国家」を否定するもので、馬鹿げた夢に過ぎない。ギリシャが(債務救済が認められず)無残に切り捨てられた時点でイタリアやフランス、スペインなどもEUから離脱すべきだった。
ちなみにEUに加盟していないリトアニア、エストニア、ラトビアは新型コロナウィルスの感染拡大の猛威を受けていない。

 残念ながらフランスや英国などはまだ時間がかかりそうだ。3月初旬の爆発的な感染拡大から4週間以上たったのに、英国はなんでそんなに時間がかかっているのだろうか?増加率は減少傾向にあるものの、まだ14%もある。パブや外食店などを禁止するのが遅すぎたのかもしれない。日本政府や東京・神奈川・大阪・兵庫の知事らはこういう失敗事例をよく見ておく必要がある私有権の侵害がどうのなどとのんびり議論していると、かえって地獄の期間が長くなり、経済的ダメージが深く大きくなる。早く乗り切った方がいい。中国のように6週間「経済ほぼ停止」とした方が実は経済へのダメージは最小限になる。
 心配なのはスウェーデンとロシアだ。ロシアは感染拡大が始まって間がないがどこまで拡大が続くのか心配だ。特にスウェーデンは他のEU諸国と同じ時期に感染拡大が始まったのに、まったく増加率の減少傾向がみられない。都市封鎖や外出禁止をきちんとできているのだろうか?これではいけない。

2.米国の状況
 前の表をもう一度示す。
4月3日時点の死亡率 World USA.png
 左の表では米国全国の死亡率は2.7%と微妙に1%から遠い数字になっているが、右の表の米国内を見ると、ニューヨーク州も3%を超え、数字的には医療崩壊となる危険な状態が始まったといえる。つまり医師・看護師・病床・設備の数では患者をさばききれなくなってきたということだ。前のブログ記事でも書いた通り米国は国民皆保険でなく、医療費はめちゃめちゃに高い。検査は無料だが、治療は自費なので患者は1か月入院したら150万~300万円あるいはそれ以上も覚悟しなければいけないだろう。そういう金を持っている人(おそらく持病のある金持ち)だけが病院に押し掛けるのだが、それでも病院がパンクしているという事だ。イベント会場などに数千のベットを並べたら解決するという問題ではない。医師や看護師の手が回らないのだ。マンパワーの問題だ。クオモ州知事は全国から医師に集まってほしいと要請していたが、ほかの州の医者も自分の患者を捨てて駆けつける人は少ないだろう。
 危険な状態と考えられるのは全表の右表にピンク色で示したように、ニューヨーク州だけでなく、ミシガン州、ルイジアナ州、ワシントン州、ジョージア州、インディアナ州など各地にあり、各地の数字は日々増加している。そもそも米国全体の医師の数、病院・病床の数が少なすぎたのだ。新型コロナウィルスでは感染から1週間で急死してしまう例もあるが、多くは陽性→軽い肺炎→重い肺炎→重症化と順に悪化して死亡するので感染から死亡まで最短2週間、通常3週間以上かかる。(もっとも病院に治療に行かない貧乏人は2週間で亡くなって今うかもしれないが、これらをちゃんとカウントしているのかどうかは不明、通常のインフルエンザもカウントされていないし、中国同様病院に行かなかった死者はカウントされていなくても不思議はない)米国で感染爆発が起こったのは3月10日ごろなのでこれから本格的に死者が増えていくと考えられる。

 北米、中南米の各国の実感染者の直近の増加率(5日間の移動平均)の推移を次図に示す。
4月3日時点の北米中南米の実感染者増加率.png
 中南米で感染爆発が起こったのは3月20日以降といえるので、これらの国々はまだ増加率が高いのもわかるが、米国やカナダもまた14%、12%と高い水準にある。米国は増加率が急減少しているが、それでもピークアウトするかどうかはまだ1週間は見ている必要がありそうだ。そしてこれから死亡率は増えていくだろう。4月3日の3週間前には感染者は1200人しかいなかった。しかしその1週間後は1万4千人、さらにその1週間後には10万人の感染者数だ。直近の死亡数の増加率から予想すると1週間後の4月10日には死者4万人という計算になる。
現時点の全世界の死者数は6万人だが、1週間後には米国が世界の死者の半分に迫るかもしれない。

3.暖かい地域、中後進国の状況
 筆者には致死率の定義がよく分からない。冒頭に書いたように、どういう医療水準を基準にするかで死亡率は大きく異なるからだ。おそらく医療の先進国ならある程度の感染者数なら死亡率1%台が可能なのだろうが、欧州の主要国の大半が医療崩壊を起こし、ドイツでさえ最終的にどうなるか分からないのに、WHOのいう致死率1%とは何の意味があるのか?という疑問がわく。
 <中国の湖北省以外の地域の死亡率が0.7%だったから>などというのは「うそをつけ!」としか言いようがない。中国の医療がいかに充実していてもドイツの死亡率1.4%の半分で済むはずがない。ドイツでは今後感染者が減っていけば母数が少なくなるから死亡率はさらに高くなっていくはずだ。中国は感染者が多かったのでそこから経験を積んだため?ドイツも9万人の感染者がいるので少なくとも有症感染者は5万人程度はおり、中国の経験の上にこれまでの経験もプラスされる。しかも、中国の感染者数には無症状者約4万人を含んでいないので、それを加えて計算すると湖北省以外の地域の死亡率は0.45%程度になってしまう。

 ただし、気温が高いとウィルスが弱毒化するという期待がある。次の表は赤道付近または今は夏の終わりにある南半球の暖かい地域を中心にピックアップしたものだ。
4月3日時点の死亡率 World South-Dev.png
 感染が始まった2月中旬のイラン・テヘランはかなり気温が低かったらしく、イランは暖かい地方とはいいがたい。トルコもイタリアと同じ程度の緯度なのでこちらに入れるのは変かもしれない。それらを除いてみてみると、必ずしも医療へのアクセスが良くない国・地域でも死亡率が1%程度またはそれより低いのに驚く。
 オーストラリア、イスラエル、サウジアラビア、UAE、シンガポール、カタールといった国々は先進国またはお金持ちの国である程度高度な医療が期待できるので数字が低くても不思議はない。
 しかし、失礼だがチリ、マレーシア、パキスタン、タイ、南アフリカといった国々に医師や病院が十分にあり、高度な感染症医療と消毒などの対策が期待できるとは思えない。表の中で重症率0%の国もいくつかあるが、そもそも人工呼吸器やICUなどの設備がほとんどない国もあるため、中等症と重症を切り分けできないのではないかと疑っている。
 それでも死亡率が5%を超えて高い国があるのはイスラム教などの集会をやめない/止めるのが遅れたなど文化的社会的背景もあるのかもしれない。もちろん、統計数字そのものも信用していいのかどうか、国の統制能力そのものにも若干疑念もある。インドなどは手を洗う清潔な水さえ国民に行きわたっていないのに、どうやって衛生管理すればいいというのか、というレベルだ。そのインドとあまり衛生事情は変わらないと予想されるパキスタンの違いは何なのだろうか? この表だけ見ていても答えは出ない。
 またWorldometerのリストの感染者数順のリストのずっと下の方に出てくるベトナムは数字自体は2月から出ているのに、いまだに実感染者数が154しかなく、死亡ゼロが続いている。これはもうわざとカウントを抑えているとしか思えないが、気にはなっている。

 それでもこの表にない台湾、香港、そしてこの表にあるオーストラリア、シンガポールといった国々の医療体制と国の統制力は期待できるものであるので、気温が高くなるとウィルスが弱毒化するという仮説は捨てきれないのだ。
 ただし残念ながら、気温が高くなると感染力が落ちるのでプロ野球やJリーグの観戦も問題なくなる、とか換気の悪い居酒屋で飲んで騒げるようになる、とはいかないかもしれない。香港やシンガポールでそんな緩いやり方をしても大丈夫だった話はないからだ。

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