各国の感染ステージと死亡率の分析

 日本が首相、知事連中の危機感のなさ、リーダーシップのなさで今頃医療崩壊の地獄の入り口に入ったばかりであるが、まともなリーダシップと適切な封鎖処置で、既に多くの国が地獄に陥らずに新型コロナウィルスの第一波から脱しようとしている。
 東アジアの国々の死亡率が低いのが何故か、BCGワクチンが抗体を持っているだの、日本人は家で靴を脱ぐからいいだの、諸説あるが、一喜一憂しないことだ。そもそも死亡率というのはステージ(感染拡大期、ピークアウト期、感染終息期)が違うもの同士を比較しても意味がない。
 ここでは国ごとにそれぞれ違うステージにいることを理解しながら、国同士の違いを考察してみた。

 ただ感染者数と死亡者数を重ねてみても何も見えてこないので、快復者数(退院者数)と共に見てみることにした。これまでのところ、筆者がきれいに感染拡大期、ピークアウト期、感染終息期のデータを得られたのは韓国とオーストラリアだけである。中国に関しては快復者数の履歴データが取れていないし、韓国もピークアウトが速かったため、快復者数は途中からしか分からない。しかし、韓国とオーストラリアは比較的きれいな曲線が得られている。

 新型コロナウィルスに関してはおおよそ次のような経緯をたどると想定される。死亡は重症化のあとにくる。
無症状 感染  ➡ 自宅待機 ➡ 快復(陰性化)
軽症  感染 ➡4・5日➡ 発症(発熱/だるさ/匂いを感じない)➡隔離(自宅/ホテル)2週間 ➡ 快復(陰性化)
中等症 軽症 ➡5日➡ 肺炎発症(酸素吸入)2週間 ➡ 快復                                  
重症  中等症1週間➡ 重症(人工呼吸器/ICU)1週間 ➡ 快復または死亡
ただし、高齢者や呼吸器系基礎疾患ありまたは高血圧/糖尿病などの場合、感染から重症化までの期間が10日~2週間と早いかもしれない。

 一部にはサイトカインストームによって肺だけでなく心臓あるいは肝臓、腎臓に急速に強いダメージを受けて、歩いていた人が突然倒れて動かなくなる死亡パターンもある。急激な心肺停止だ。
 肺炎自体も免疫系が炎症性サイトカインをもちいて肺胞細胞を攻撃するものであるが、ウィルスが血液中に流れ出て心臓その他の臓器に到達するとそこでも免疫系の攻撃が始まり、最悪自身の心臓を破壊して止めることが起こりうる。そんなことは通常の肺炎では決して起こらない。
注)15日にインターロイキン(IL)-6阻害薬のトシリズマブ(関節リウマチ治療薬)が有力といういいいニュースがあった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の主な死因の1つに急性呼吸窮迫症候群(ARDS)があげられている。中国・武漢市の金銀潭医院の重症症例52の67%にARDSが認められたと報告があり、ARDSはサイトカインストームが原因と考えられることから、重症者の治療に光明となるかもしれない。
 なお、ARDSを起こした重症患者に人工呼吸器やICUまたはエクモが(不足して)割り当てられなければ、それは即、死を意味する。感染者が見つかってすぐ死亡ということは通常はあり得ないが、見つかった時にはすでに重症で、かつ人工呼吸器やICUなどの有効な設備が不足していれば1,2日のうちに死亡してしまうだろう。
 だからまずは検査のタイミングが重要という事になる。早く見つけるほど助かりやすい。しかし、感染者数が医療設備のキャパを超えてしまうとどうにも救いようがなくなっていく、それが国によって死亡率の状況が異なってくる大きな要因となる。

 以下の分析に用いたデータはWorldometerのCOVID-19 Coronavirus Pandemicの日々のデータで、グラフ中の退院数はtotal recoveredなので厳密には退院数を含む回復数の意味になる。

1.日本の周辺の諸国
韓国の感染者発生数、死亡数、回復者数の推移.png
 それぞれのデータを生データでグラフ化すると上下動が激しく傾向がつかめないので、以下全てのデータ処理で感染者発生数、退院数、死者数いずれも5日間の移動平均を取っている。
 韓国の死亡率は4月17日時点で2.2%である。(死亡数/全感染者数)
 退院数が途中からなのが残念だが、感染者の発生数のピークと退院数、死者数のピークはきれいにずれていておよそ25日間あいている。
韓国で最初の感染者ピークに数日ずれて死者のピークが見られるのは大邱で発生した医療崩壊によるものと考えられる。検査した時にはすでに遅く重症化していて大邱とその周辺の設備が不足して助からなかった人が多かったことを表している。
 死者数は右軸で、左軸の100分の1に合わせてある。医療崩壊したにもかかわらず、死者数は世界的に見ても非常に低く抑えられているのが注目される。

 オーストラリアは医療崩壊を起こさなかった完璧なサンプルだ。同国の死亡率は4月17日時点で1.0%と非常に優秀だ。
オーストラリアの感染者発生数、死亡数、回復者数の推移.png
 退院数、死者数のピークは感染者発生のピークから10日以上ずれている。軽症で見つかった人は10日程度で回復する一方、恐らく検査が遅く既に症状が進んでいた中等症の人が退院者の100分の1程度死亡していると考えられる。退院数の面積は感染者数の面積の3分の1程度なのはまだ入院患者が3分の1程度いて、残りの3分の1程度は無症状感染者かもしれない。

 日本はまだ最初の感染拡大期のステージなので死亡率がどうという段階ではない。
日本の感染者発生数、死亡数、回復者数の推移.png
 気になるのは退院数が感染者数と比べ物にならないほど低い点だ。これが感染者数に2週間ほど遅れて立ち上がってこないのは欧州で見られる悪いパターンなのかもしれない。右軸は韓国、オーストラリアと違い左軸の10分の1であり、死者数は多い。残念ながら韓国やオーストラリアのパターンにはなりそうもない。

 台湾も感染収束期にあり、2日連続で新規感染者が見つかっていない。死者は6人だけで死亡率は4月17日時点で1.5%と非常に低い。
台湾の感染者発生数、死亡数、回復者数の推移.png

 そもそも圧倒的なのは、感染者の数の少なさだ。極めて優秀な水際対策とITツール、国民IDを元にしたマスク配布などを含めた衛生対策だ。
死者数の目盛りが1以下なのは3日で2人とか1人とかと少ない数字のため(5日間移動平均なので)こんなグラフになっている。
韓国、台湾、次に紹介する香港に共通するのはいち早く中国の情報を中国語で収集して分析し活用している点だろう。SARSの発生源の中国を常に監視している姿勢が奏功した。台湾は12月31日時点で武漢でコロナウィルスによる肺炎症例が7つ出た告発情報を感染対策専門チームがとらえチームで共有化し、WHOにヒト=ヒト感染の危険性を警告し、国の防御態勢の整備を始めた。しかも、台湾は仕事も学校も継続しながらこれだ。
 日本には感染症の専門家が大勢いても誰も中国語情報を気にしていなかった中国政府よりのWHOの情報に頼っていた。これが最大の失敗の始まりだ。台湾に行って教えを請え、この役立たずども
 香港の対応も見事だった。死者は4人だけで死亡率は0.4%にとどまる。
香港の感染者発生数、死亡数、回復者数の推移.png
 香港の曲線は台湾と瓜二つだ。今後退院数の山が終われば第一波が終了となる。これらがあるべき姿と考える。
 香港行政当局は当初中国人の流入を止めなかったが、医師会がストライキを起こすなどして行政を動かし中国との境界を封鎖した。それで死者数4人というのは恐れ入る。745万人の大都市で後に出てくるベルギーの1146万人とさほど違わないが、これほど感染者数を抑え込めたからこそ設備に余裕を残して乗り切れたといえる。感染者数を最小限に抑えることが新しいウィルスによる感染症対策では絶対正義だ

 医療インフラの整ったシンガポールも当初は非常にうまく立ち回っていたが、外国人労働者の居住地域で大きなクラスターが発生してしまい、抑えきれていない。
現時点では死亡率は0.2%と低いものの、まだ感染拡大期真っただ中で死者数は急増する可能性がある。
シンガポールの感染者発生数、死亡数、回復者数の推移.png
 4月上旬からの感染者数の急増は、米国などの感染国からの流入を止めるのが遅れたのだろうと考えられる。人口560万の都市国家が仮に東京都と同程度の医療キャパシティを持っていたとしても、この感染者急増に耐えられるだろうか?

 東南アジアでは中華圏以外で医療キャパシティが十分と考えにくい国々でも封じ込めに成功している。
 タイも感染収束期にある。死亡率は4月17日時点で1.7%と十分低い。タイの感染者発生数、死亡数、回復者数の推移.png
 死者数が少ないのは感染者数を低く抑え込むのに成功したためだろう。退院数も順調に増えており、死亡率が大きく悪化する心配はなさそうだ。

 マレーシアも封じ込めに成功し、収束期にある。タイより感染者数は多いが17日時点での死亡率は1.6%と十分低い。
マレーシアの感染者発生数、死亡数、回復者数の推移.png
 言い方が悪いが、感染者数を1日200人以下に抑え込めれば、マレーシアのような国でも死者をあまり出さずに乗り切れるという事かもしれない。

 フィリピンやインドネシアは失敗してしまった例である。フィリピンの17日時点の死亡率は6.4%と高い。
フィリピンの感染者発生数、死亡数、回復者数の推移.png
 これまでの国々のグラフと異なり、退院数が少なく、死者数が多い。感染者数のピークから10日遅れて死者数のピークが来ているのは、発見(検査)が遅れたため症状が進んだ人が多かったという事だろう。韓国、オーストラリアと異なり、右軸は左軸の10分の1だ。仮に感染者数が今後減少していっても死者数はこれからまだまだ増えていくと思われる。
 おそらくスラム街のような地域で感染が急速に広まったので検査も入院も間に合わなかったのかもしれない。まずは感染者数が抑えられていくことを祈るしかない。

 東アジアの最後に筆者がいまだに信じられない例・ベトナムを示す。
ベトナムはいまだに死者ゼロなのだ。しかもこれまでの総感染者数が268人と尋常でなく少ない。
ベトナムの感染者発生数、死亡数、回復者数の推移.png
 当初はでっち上げではないかと考えていたが、退院数はまともな経過なので、最近やはりまともなデータなのかもしれないと考えるようになった。多くの市民が中国人に反感があるとはいえ中国系住民もおり中国に国境を接している。親中国のカンボジアとも接しており、どうしてこれだけの感染者数にとどめることができたのか不思議でならない。しかし第一波は死者ゼロで乗り切れそうだ。大したものだ。


2.ドイツとその周辺国
 欧州での成功例は何といってもドイツとその周辺国だ。

 感染収束期といえるのはまずオーストリアだろう。17日時点の死亡率は2.8%と欧州ではドイツに次いで優秀だ。
オーストリアの感染者発生数、死亡数、回復者数の推移.png
 感染者ピークから2週間後に退院のやや低いピークがあるのは軽症者が先に退院し、さらにその1週間~10日により高いピークが来て重症者も退院している状況と考えられる。検査・発見が早いため、重症者を少なく保つことができ、人工呼吸器やICUなどの設備のキャパシティを超えなかったと考えられる。
 これは筆者の想像だが、オーストリアはドイツと同じ文化圏で医師の数や病院のベッドの数も十分にあったのだろうと思う。

 ドイツも収束期だと考えてきたが、ここ数日感染者数が増えてきたのが気になる。17日時点の死亡率は15万人もの感染者がいて2.9%とオーストリアに次いで低く、そら恐ろしいほど優秀だ。
ドイツの感染者発生数、死亡数、回復者数の推移.png
 曲線はオーストリアとほぼ同じだが、なんといってもオーストリアとは一桁違う感染者数で1日に何千人の感染者を処理し続けている医療システムは驚異的だ。医師の数、病床数、ICUは日本の5倍あるといい、医療キャパシティがすごい。イタリアやフランスの重症者の一部を受け入れて治療するような余裕すら見せていた。ずっと減少傾向にあったのだが、残念ながら直近1週間で感染者数が増え、死者も増えてしまった。
 ドイツの封鎖で筆者が唯一疑問なのは、無症状感染者を自宅静養させている点だ。ホームドクターが電話やITで日々の状況をチェックするシステムはいいとして、家族に感染させてしまったら感染者を増やしているだけではないのか? 同じ家に住んで感染者が家族と会話せず2m以内に近づかずに2週間以上過ごすことができるとは思えない。米国CDCが指摘したようにウィルスは床に落ちるので靴の裏にもつく。だから食堂やトイレや風呂を共有してしまうと絶対に感染させてしまう。ごみを捨てる際感染者のごみだけきちんと分別できるか?感染者のごみをを非感染者が触っても大丈夫と断言できるか?
 無症状感染者はホテルなどへの隔離すべきだ。ドイツのやり方はこれだけは理解できない
 今後の動向が気になる。

 ドイツの隣国チェコも感染収束期にある。死亡率は2.6%とドイツより低く優秀だ。成功要因はオーストリア同様感染者数の抑え込みに成功したことだ。
チェコの感染者発生数、死亡数、回復者数の推移.png
 退院数が感染者数のピークから2週間たってもピークしていないのはどういう事だろうか?医療設備が不足していれば死者数が増えるはずなのでそうでないとすると、非常に早期に感染者を検出できているので症状が進むのに時間を要しているのか、その割に軽症で退院できた人が少ないのだろうか?あるいは退院者数の集計に欠陥があるのか?

 ポーランドもかつてドイツに支配されたことがあったし、勤勉な国民性も似ている。
 これまでのところ感染者の抑制には成功しているが、死亡率は4.0%と少し悪い。
ポーランドの感染者発生数、死亡数、回復者数の推移.png
 これは筆者の想像だが、ポーランドは貧しく多くの労働者がドイツに出稼ぎに行っていて、医師のような優秀な人材もドイツに流出してしまっているのではないだろうか。そこまで死者が増えていないのはドイツの隣国で人的交流が多い中、感染者数を数百人に抑え込めた結果だと考える。なお、ポーランドはBCGワクチン接種国だ。後に記すようにBCGワクチン有効説論者はドイツ=ポーランドの感染者数のコントラストもBCGワクチンのお蔭だと主張したようだが、ポーランドの方が死亡率が高いので、ワクチンだけでは医療キャパのギャップを埋められないという事か?


 スイスは欧州で最も早く感染収束期に入った国だ。死亡率は17日時点で4.8%とやや悪いが、このまま収束してくれれば御の字だろう。
スイスの感染者発生数、死亡数、回復者数の推移.png
 当初はドイツとスイスが欧州で別格なのは医薬品メーカーの発祥地であるため、ナファモスタット、トシリズマブ、レムデシビルなど有効な医薬品の備蓄が多いのでは?と推測していたが、そういうわけでもなかったらしい。ドイツやその周辺国に比べて死者数が多いのは重症者に必要な人工呼吸器やICUの設備数の限界を超えたためと考えられる。感染者数も下がり切っておらず、退院数も多いがさらに増えていってほしいところだ。


3.欧州ラテン系
 死亡率で見る限り世界最悪なのはイランなどではなく、今のところイタリア、スペイン、フランスといった欧州のラテン系だ。(今後米国が最悪を更新するかもしれないが)

イタリアは収束期にあるもののまだ先は長い。17日時点で死亡率は13.1%でベルギーの次に悪い数字だ。
 イタリアの感染者発生数、死亡数、回復者数の推移.png
 感染拡大期の当初感染者発生から3日後にその10%が死亡という状況だったが、3月10日ごろからは感染者発生の日にその10%が死亡というひどい状態が続いた。これはイタリアが日本に次ぐ高齢化社会で介護施設などが次々にやられたこと、EUに財政を縛られて病院や医師をあり得ないほど減らしてしまって医療キャパシティがそもそも不足していたことによるだろう。感染者発生のピークの1週間後に死者のピークがくるというのは検査(発見)が遅れたため重症者が次々と病院に運び込まれた、あるいは渋滞していたことと想像される。
 それでも回復者が増えてきており、医療現場は必死の戦いを続けている。これ以上感染者を増やしてはいけない。

 フランスも収束期だが、死亡率は12.1%とイタリアに次いで悪い。
フランスの感染者発生数、死亡数、回復者数の推移.png
 感染者のピークから死者のピークが続いている感じなのは、やはり設備が不足しているのだろう。退院者数が増えない限り死者数が減らない状況だ。イタリア以上に医療キャパシティがあったはずだが、感染者数のピークがイタリア以上に多くなってしまったので限界を超えてしまったと考えられる。検査(発見)も後手に回っているため症状が進行してから入院しているのだろう。 感染者数が直近で激減しているのは集計上なにか問題があるように感じる。

 スペインも似たような状況だ。17日時点での死亡率は10.4%。
スペインの感染者発生数、死亡数、回復者数の推移.png
 イタリアやフランス以上に退院者数が多いのは医療が機能している証拠だが、死者数が多いことは重症者に対応すべき設備が不足していることを意味する。

 同じラテン語圏でもスペインの隣国ポルトガルは事情が異なる。死亡率はたったの3.3%だ。
ポルトガルの感染者発生数、死亡数、回復者数の推移.png
 スペインとの国境が山岳部にあるため国境を越えた人の移動が多くないのだろうか?
死者数が少ないのは第一に感染者数がスペインの10分の1しかないためかもしれない(19万人に対して1万9千人)。そのため医療キャパシティの限界を超えずに第一波を乗り切れたかのように見える。ただし、回復者の数がそれほど多くない。これは無症状感染者が多いか、あるいは治療に時間を要しているかだ。前者ならこのまま収束できるが、後者なら今後死者数が増えてしまう。今後に注目する。

 もう一つ注目したい国がある。ラテン系の国とは言われないがイタリア北部と隣接している工業国クロアチア(旧ユーゴスラビア)だ。
イタリアとは恐ろしいぐらいのコントラストで、感染者数は少なく、死亡率は17日時点で2.0%と旧ドイツ帝国群より低い。クロアチアの感染者発生数、死亡数、回復者数の推移.png
 なぜこれほど感染者数を抑えられたのか、筆者は情報を持っていないが、これはあきらかに欧州での成功例の一つだろう。
なお、スペイン=ポルトガル、イタリア=クロアチア、そして後述するイギリス=アイルランドの顕著なコントラストが「BCGワクチン有効説」を生んだと考えられる。BCGワクチンを打つことで未知のウィルスに対する抗体ができやすくなる、というのは魅力的な話だが眉唾だ。インフルエンザワクチンでさえ毎年打たなければ利かないのに、何十年間も未知のウィルスに効果があるものがあり得るかどうかだ。
しかし次に示すベルギー、オランダとルクセンブルクの見事なコントラストはBCGワクチンでは説明できないことから、封鎖の早さと徹底こそがカギになることが分かる。


4.ベネルクス3国
 人口1100万人の小さな国ベルギーは欧州で最も悲惨な状況かもしれない。死亡率は17日時点で14.0%と欧州最悪だ。
ベルギーの感染者発生数、死亡数、回復者数の推移.png
 感染者は発生し続けていて、死者数はまだ増加しそうな勢いがあり、快復者数はあまり伸びていない。まさに地獄のような状況だ。感染者数が20日間もあまり変動がないのは検査する人員のキャパいっぱいなのだろう。退院者数が増えないのもキャパのせいだろう。そして次々と人が亡くなって死者数だけが増えている。あまりにもひどい状況だが、ドイツあたりが救いの手を伸ばしてやれない限り一国ではどうにもできない状況ではないだろうか?

 オランダの死亡率も11.3%と高く、悲惨だ。
オランダの感染者発生数、死亡数、回復者数の推移.png
 感染者数は検査のキャパに合わせて追加し続けていて、死者数はまだまだ増えている。そしてなぜか退院者数がほとんどない。これは単に集計をきちんとしていないだけかもしれないが、ベルギー同様延々と続く地獄のようだ。
日本でだって毎日1000人の感染者が増えるなんて事態にはとても対応できないだろう。そんなことができる国はドイツぐらいだ。

 ところが同じベネルクス3国でも人口61万人の極小国ルクセンブルクはまったく事情が異なる。
ルクセンブルクでは感染者発生数は1日200人以下に抑えられていて、死亡率は2.0%と欧州最低レベル(クロアチアと同じ)だ。
ルクセンブルクの感染者発生数、死亡数、回復者数の推移.png
 ドイツとベルギーとフランスに国境を接していてこれだけ感染者数が少ないのはBCGワクチンのせいではない。ルクセンブルクはBCGワクチンの接種はしていない。だから国境封鎖のタイミングが早く、国民に都市封鎖の適切な指示を出したためとしか考えられない
それだけでこれだけのコントラストができるという事だ。
 よくよく考えてみると1日200人の感染者でも医療崩壊しかかっている東京都より医療キャパが大きいのだろうか?いや違う。感染者を早期に発見できているため症状が進んだ感染者の入院が少ないのだろう。東京都では感染拡大期でも56人亡くなっているが、かの国では収束期にもかかわらず27人にとどまっている。
 これが重要な点だ。厚労省が感染者数を把握して論文を書くためとかクラスター班がどうのという馬鹿げた理由でPCR検査を絞ってきたため、日本では感染者の発見が遅れており、17日時点の東京の陽性者の割合は検査者数の半数を超えている。すでに市中に感染者が蔓延している。こうなってはすべてが手遅れだ
PCR検査は迅速に最大限行って感染者を早期発見しなければならない」これがルクセンブルクが死守した鉄則だ。


5.イギリスとアイルランド
 イギリスの状況もベルギー並みに非常に悪い。感染はまだ収束していず、死亡率は17日時点で13.3%でさらに増えそうだ。
イギリスの感染者発生数、死亡数、回復者数の推移.png
 イギリスはNHS国民保健サービスと呼ばれる国民皆保険制度を敷いているが、1日4000人、5000人の感染者が発生したら、そんなものは何の足しにもならない。医師の数、ベッドの数、もちろん人工呼吸器、ICUといった設備のキャパシティを超えてしまっている。感染者数はいったんピークアウトしたが、また盛り返しており医療関係者の地獄はまだまだ続きそうだ。ただし、快復者の数の統計は直近でNA(集計なし)になるなどあてにならない。

 これと好対照なのが同胞であり異国であるアイルランドだ。首相が自ら医師の業務をこなすなど話題になっているが、感染は大きく爆発せず収束しつつある。死亡率は3.7%と善戦しているが、感染者のピークの2週間後すなわち4月25日ごろ死亡者数のピークが来るのでまだ増えるだろう。
アイルランドーの感染者発生数、死亡数、回復者数の推移.png
 アイルランドもBCGワクチン接種国なので、当初イギリスとの対比はBCGワクチンが理由だと考えられた。

6.北欧諸国
 2月13日にドイツの研究チームが発表した内容を見て筆者は気温が高い地方ではウィルスは弱毒化し、逆に北国ほど感染力も高まり毒性も強くなると考えた。そのため北欧諸国やロシアで悲惨な状況を生むことを恐れていたが、その考えは間違っていた。
 デンマークやスウェーデンは確かに悪いが、ラテン系ほどではなかった。

 デンマークはまだ収束期にあるといいきれないが、死亡率は4.7%と善戦している。
デンマークの感染者発生数、死亡数、回復者数の推移.png
 スウェーデンはもっと悪い。まだ感染者は増え続けており、死亡率は17日時点で10.6%でさらに悪化しつつある。快復者数も増えていない。
スウェーデンは日本政府と同様経済を重視してロックダウンしていないらしい。感染者数は医療キャパシティを超えてしまって、死者が増えている。この先まだ悪くなりそうだ。
スウェーデンの感染者発生数、死亡数、回復者数の推移.png

 一方ノルウェイやフィンランドでは状況はそれほど悪くない。
 ノルウェイの死亡率はわずかに2.2%だが、それは感染者数が少ないことによる。
ノルウェーの感染者発生数、死亡数、回復者数の推移.png
 北方の国でも感染者数さえ抑え込めれば死者はそれほど増えずに済むという事だ。感染の収束期にあることは間違いない。ただ、ノルウェイでも快復者の統計に問題があるのか、退院数がほとんどない。死者数と同様の時期にピークが来ない事情が何なのか分からないが、ここでも集計上の問題があるのかもしれない。
 なお、ノルウェイは2009年までBCGワクチン接種国だった。だから12,3歳より上の世代はBCGワクチンを接種していた。
フィンランドでも死亡率はわずか2.4%に抑えられている。要は感染者を増やさない国境封鎖、都市封鎖とその徹底方法だろう。


7.北米
 米国は欧州の感染拡大を見て欧州からの流入を遮断し非常事態宣言も出したが、時すでに遅かった。特にニューヨーク州など都市部で通勤を止めるなどの都市封鎖が遅れたのが大きいらしい。死者数の中でヒスパニックや黒人のシェアが高いのは、多くがサービス業に属していて電車で職場へ通勤していたためらしい。4月上旬に一旦ピークアウトしたと思われたがまだ収束期に入ったとは言えない情勢だ。
米国の感染者発生数、死亡数、回復者数の推移.png
 この段階ではまだ死亡率がどうのといえる段階ではない。17日時点では5.1%だが、まだまだ増えるだろう。なおかつ、中国と同様格差社会なので病院に行けずに死亡している隠れた死者が多いはずだ。都市封鎖の不徹底がヒスパニックや黒人の死者を増やしていると予想される。

 カナダも米国と同様の曲線になっている。カナダの死亡率が現時点で4.1%と米国を下回っているのは、感染者の絶対数が1桁少ないからだろう。
カナダの感染者発生数、死亡数、回復者数の推移.png
感染者数が少なければ救える人の数が増えるので退院数が多く死者が少なくなる。しかし感染が収束しない限り今後も死者が増え続けてしまうだろう。


8.結論
 以上筆者が見た限り死亡率に大きく寄与するのは第一に感染者数が少ないことだ。1日の感染者数が1000人を超えても死亡率を2%台に抑えられたのはドイツ以外にはない。そのドイツもその死亡率は維持できないだろう。感染者数を抑えるのに最も寄与していると考えられるのは国境封鎖と徹底した都市封鎖または衛生管理だ。
 台湾と香港だけは水際対策で成功して都市封鎖まで至らなかったのかもしれない。
 また人口61万人の極小国家ルクセンブルクが感染者数が1日200人近くまで達しても医療崩壊しなかったのは、医療キャパシティの問題ではなく、感染者の早期発見に成功したためと考えられる。封じ込めだけでなく早期発見も死亡率を抑える重要なファクターと考えられる。

 気温が高くなればウィルスが感染力が弱くなり弱毒化するという仮説は否定はされないが、スラム街でアウトブレークなどがあると意味がなくなるので社会条件によって異なるとしか言えない。今回はインドのように衛生状態の悪い国は含めなかったが、かの国では当然悲惨な状況になっている。

 BCGワクチン有効説はこの分析では結論が出せない。ルクセンブルグではワクチン非接種国だが封じ込めに完全に成功している。しかし、クロアチア、ポルトガル、アイルランド、ポーランド、ノルウェイといったBCGワクチン接種国では悲惨な隣国と接していながらも確かに感染者数が見事に抑え込まれている。
 なおフィリピンはBCG接種国だが抑え込みに失敗している。これもワクチン接種がスラム街まで及んでいなかったとかいう事実があるなら、また別な話になる。

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