外出自粛解除できるところとできないところ(1)

 前回ブログ記事で書いたように日本全体で見ると緊急事態宣言の解除、すなわち「外出自粛」「営業自粛」はまだ先であることが分かった。
たとえ新規感染者が減っていても病院の病床がいっぱいでは解除できない。病室に十分な余裕ができないと次に感染者が増えた時に対応できないからだ。

 しかし、全国一律で緊急事態を続ける必要はないと考える。そもそも一人の感染者も出ていない岩手県の人たちは、なぜ自粛しなければならないのかと疑問に思っているだろう。感染者の数が少ない県の人たちは感染者の多い県に出かけるのはダメにしても県内だけは自由な移動できてもよいではないだろうか? 可能なら地域の経済の息の根は止めたくないし、子供たちを学校にやりたい。

 そこで全国47都道府県の状況を前回ブログと同様視覚化して確認してみた。ここで用いたデータは厚労省が日別にだしている「新型コロナウイルス感染症(国内事例)の状況(PCR検査陽性者数の累積)」によるもので、退院数などに都道府県の集計と差異がある場合もある。各データは日々の値そのもののでなく、増加や減少の傾向を知るために5日間の移動平均をとったものである。グラフの中で感染者数、入院数、退院数は左軸で読み、死亡数のみは右側の軸で読む。桁が違うためだ。

1.北海道
 北海道は感染収束期どころか感染拡大期にある。まだ外出自粛や営業自粛を解除できる状態ではない。
北海道.png
上図の中で「入院数」は正確には入院等の数であり、ホテル隔離や自宅静養を含む。
北海道の直近3日間の増加率は3.5%~9.0%で、このまま続くと次図に示すようにせっかく新たに増やした感染者用の病床も不足してしまいかねない。札幌市が都市封鎖を宣言するようだが、非常に危険な状態である。
北海道今後の予測.png
 なお、上の図で実感染者数は感染者数から退院数、死亡数を引いた正味の感染者数の意味。入院数を予測している点線はホテル/自宅隔離を除いて入院する人を実感染者数から比率で割り出している。この比率はNHKが4月13日、20日、27日に公表してきた各県の病床数と入院数に基づいている。点線が13日、20日、17日でカクカクしているのは比率がそれらの時点で少し変化しているため。本来80%程度は軽症者といわれるが、それをどこまで入院させるかは都道府県ごとに判断が異なる。感染者が多い自治体では入院患者を限定する方向だし、余裕がある自治体やホテルなどを確保できていない自治体はほとんど全員入院の方向だ。

2.東北地方
 岩手県はいまだに感染者ゼロだが、青森県や秋田県も極めて少ない。
 青森県は計26人感染者が出たが、すでに14人が退院していて入院は12人だけであり、県内の第2種感染症指定病院の病床数22を下回っている。
 秋田県は16人の感染者が出たが、既に9人退院していて入院は9人だけであり、県内の第2種感染症指定病院の病床数30を下回っている。

これらの3県は手洗いとマスクを原則とて「3密」を避ける行動をとるよう要請しながら経済活動をしても差し支えないかもしれない。学校は多少寒くても1時間ごとに窓を開けて換気しながら授業すればいいだろう。仮にパチンコ屋や夜の飲み屋でクラスターが発生して当初の医療キャパシティ(第2種感染症指定病院の病床数)を超えるようになったら、その時点で県ごとになんとか宣言をして自粛するように要請すればいいかもしれない。

 同じ東北でも宮城県、山形県、福島県は感染者数がより多く、入院者数が県内の第2種感染症指定病院の病床数だけでは足りず、一般病棟の一部の病床を使って入院・治療している。しかし次に示すように3県とも感染者数は減少しており、退院数も増えているので5月6日時点で入院患者数は第2種感染症指定病院の病床数で足りるようになるかもしれない。
宮城県の推移.png山形県の推移.png
青い線と灰色の線が重なったところは灰色になってしまうようで、見にくい点はご了承いただきたい。
福島県の推移.png

 筆者はこれら3県を含め、東北地方6県は非常事態宣言を解除してもいいのではないかと考える。原則は手洗いとマスク、消毒であり、「3密」を避けた行動をとること。また北海道や関東地方、三陸地方など激しい感染地帯への越境は自粛だ。夜の飲み屋やパチンコ店の営業をどうするかは各県の知事に任せてもよいと思う。もともと強制力はない中で協力いただけない業者は県のHPで名前を公表するだけ、という弱々しい対策だけでもあった方がいいのかどうか、だけの判断だろう。

3.関東地方
 4月7日から緊急事態宣言の対象となった東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県及び途中から特定警戒地域となった茨城県はいずれも新規感染者が減少する傾向にある。しかし、退院数がまだ増えておらず病院の病床がふさがっている状態のままと考えられる。
東京都の推移.png神奈川県の推移.png埼玉県の推移.png千葉県の推移.png
茨城県の推移.png
 これらの都県のうち、感染者用の病床が間に合っていないのが東京都だ。4月27日までに用意できた感染者用病床は2000まで増えたが、(厚労省と異なり退院数が1100以上カウントされている)東京都のHPでの発表でも入院患者の数は28日時点で2695人であり、オーバーしている。
次図は直近3日間の増加率の小さいものと大きなものを使った今後の推移予測。
東京都今後の予測.png
 他の道府県全ては入院等の数が用意された病床数を下回っているが、東京都だけはオーバーしている。
筆者には東京都の状況が正直言ってよく分からない。間に合っていない感染者たちは自宅で病床があくのを待っているのかもしれない。もしそうであるならまさに医療崩壊そのものだ。つまり救急車の救急要請に全ての病院が拒否し続けているようなものである。さっさと病院・病床を用意しないと自宅でサイトカインストームによる急変で亡くなる人が増えていくことになる。
 感染者用の病床の準備が感染者の拡大に間に合わなかったのは東京都知事と区長の責任である。先見の明で必要数を予想し、地元の医師会を説得し個別の病院の調整をまとめる、そういったことができないようでは、リーダーがいないのと同じだ。失格である。都知事は4000床用意すると宣言したが、いつになったら実現するのか?
一方神奈川県知事は3月後半の時点で「神奈川モデル」をぶち上げ、中等症患者用に1000床用意すると宣言して、4月13日までに本当に用意してしまった。これは一般病棟の入院患者を別の病院に転院させるなどしないとできないことで調整が大変だが、短期間でそれだけ大量に準備できたのは大したものだ。次図は神奈川県の今後の予測図。感染者の抑制に成功したことと当初から軽症者は自宅またはホテルと指示したため、用意した1000床は十分な余裕となっている。
神奈川県の今後の予測.png

 神奈川県の直近3日間の実感染者(入院又はホテル隔離対象者)増加率は-2.5~1.9%と減少の目がでてきた。千葉県は0.3~1.8%、埼玉県は0.8~2.3%ともうすぐ減少に転じるところか。茨城県は-5.3~0.8%と減少が始まった。この先、入院者数が元の第2種感染症指定病院の病床数以下になるのにはまだ3週間程度は要するのではないかと予想される。

 群馬県、栃木県も感染者数は減少しているが、退院者数はまだ少ない。
群馬県の推移.png栃木県の推移.png
 栃木県は当初の第2種感染症指定病院の病床数30に対して28日時点の入院(等の)数が41なので1週間ほどすれば一般病棟の病床が必要なくなり、正常な(一般病棟から入院患者を追い出したり、一般病院に感染者を混在させることのない)医療体制に復帰する。その時点で栃木県だけ外出自粛や営業自粛を解くことも可能かもしれない。
 群馬県は第2種感染症指定病院の病床数50に対して28日時点の入院(等の)数が120なのでまだ2週間はかかるだろう。

4.甲信越地方
 山梨県、長野県、新潟県ともに感染者数は少なく、山梨県、長野県は感染者数が減少しているが、新潟県だけは傾向が分からない。

山梨県の推移.png長野県の推移.png新潟県の推移.png
 山梨県は直近5日間で感染者1人とほぼ収束しており、入院患者が退院するのを待つだけだ。県内の第2種感染症指定病院の病床数28に対して現時点(4月28日時点)で入院数29なので、あと1週間この状態が続けば医療体制は正常に復帰するといえる。正常な医療体制とは新型コロナのような第2種感染症の患者を感染症対策のある指定病院以外の病院に混ぜない本来の形という事だ。
 長野県も指定病院の病床数44に対して現時点の入院数49なのであと1週間で正常復帰と見ていいだろう。
 しかし、新潟県は28日に6人の感染者が出てしまって減少傾向でなくなってしまった。まだ先を見てゆく必要がありそうだ。

 以上、甲信越地方は山梨、長野はあと1週間で緊急事態宣言の自粛要請を緩めてもよい状況と考える。新潟は残念ながらまだしばらく様子を見る必要があると考える。

5.東海地方
 東海地方の中で愛知県、岐阜県は特定警戒地域だが、緊急事態宣言の効果が出てここ数日は落ち着いてきている。愛知県の推移.png岐阜県の推移.png
 愛知県は直近3日間の実感染者数の増加率が0.3~1.0%と入院数が減少に転じる局面だが、退院数が増えてこないと実感染者数は減らない。岐阜県は5日連続で実感染者数の増加率が0%以下と完全に減少局面に入っている。
愛知県の今後の予測.png岐阜県の今後の予測.png
 岐阜県の医療関係者は実感染者数がはっきりピークアウトしているのを見てほっとしていることだろう。岐阜県はうまくすると(退院数が順調に増えれば)あと1週間で実感染者数が当初の医療限界すなわち第2種感染症指定病院の病床数に収まるようになるかもしれないが、しばらく様子を見た方がいいだろう。愛知県はまだ先が長い。

 静岡県、三重県は感染者数が少なく、現時点(28日時点)で静岡では入院数43人は第2種感染症指定病院の病床数46に収まっており、三重県も入院数28人は指定病院の病床数22に近い。あと1週間で正常な医療体制に戻る可能性は高い。
静岡県の推移.png三重県の推移.png
 1週間後にはこの2県は緊急事態宣言を解除してもおかしくないだろう。一方愛知県は1週間後では解除は早く、岐阜県も1週間後ぎりぎりどうするかというタイミングになる。ぎりぎりということは県知事と県の医師会で協議すべき話で、内部事情を知らない国がどうこう言う話ではないと筆者は考える。

長くなったので後半は次の記事に分ける。

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