警戒中の都道府県の入院数の状況

 前回ブログで指摘した都道府県の中で筆者が注目している地域について、政府がなんとか宣言を解除したかどうかにかかわりなく、1週間後の現状を簡単にお知らせしておく。
 繰り返しになるが、筆者が注目しているのは感染者発生が何人いたとかいなかったではなく、感染者の入院数が第2種感染症指定病院の病床数を下回って医療体制が正常化したかどうかだ。大きなブレイクアウトの第2波以前の問題として、外出自粛や営業自粛をだんだん緩めていくと、当然どこかでクラスターが発生する。韓国のナイトクラブの例もあり、いきなり百人単位のクラスターはおこらないとも言い切れない。そういった事態に備えて感染者用の病床が十分空いていることが自粛解除の目安になるからだ。
 なお入院者数(入院調整中を含む)は各都道府県のHPから拾った。兵庫県、京都府に関してはよくわからなかったので分析していない。

 次図は5月の北海道の入院数の推移と今後の予測。予測というほど大したものではなく、直近の入院数の増加率の最大のものと最小のもので1週間ほど先まで線をひいてみたものだ。
 (グラフはやや複雑で二つの増加率は左軸で読み、他の数字は人数又は床数で右軸で読む。以下全て同じ)
北海道.png
北海道は約2週間ほど減少が続いているものの、退院(又は死亡)によって入院患者が第2種感染症指定病院の病床数まで減るまでには、まだ相当時間がかかり、5月中の達成は滑り込みセーフぐらいのタイミングになりそうだ。

 次図は東京都についての同様のグラフ。
東京都.png
東京都は何しろピーク時に2000人超の入院患者があったが直近では600人台まで減った。現場の医療関係者の並々ならぬ努力の結果である。しかし、第2種感染症指定病院の病床数114までの道のりは遠く、5月中に医療体制が正常化することは難しそうだ。

 余談だが、医師仲間で一時期よく話に出たのが、このコロナウィルスはほんとに「よくできたウィルス」だよね、ということだ。SARSやMARSは致死率が高かったため広く拡散する前に途絶えてしまったけど、今回のコロナは致死率が少ないからこそ途絶える前に世界中に拡まったよね。だから<生物>としては非常によくできている。しかも「発症」する前から感染力がある。こういうウィルスは今までなかったよね。ほんとに「賢い」よね…  これは最前線の現場にいたら言えない軽口である。(筆者らが学生の頃はウィルスは<生物>ではなかった)
 一方、是非多くの人に知ってもらいたいのは、現場の医師や看護師の精神状態だ。
『国連によると、新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、カナダの医療従事者の47%が精神的サポートの必要性を訴え、中国の医療従事者は50%がうつ状態にあると報告。パキスタンの医療従事者は42%が軽度の精神的苦痛を、26%は重度の精神的苦痛を訴えた。』(CNN5月15日記事より)医師や看護師はどんなに多くても患者の命を救わなければならないという義務感と感染したら死ぬかもしれないという恐怖のストレスに長時間さらされている。特にマスク、防護服、フェイスガードなどのPPEが圧倒的に不足していて、使いまわししてはいけないものを長期間(消毒でごまかしながら)使いまわししている恐ろしい状況なのだ。そして治療しても治療しても来る日も来る日も次の患者が来るという状況は極限状況そのものだ。米国、イギリス、カナダ、パキスタン、インドは終わりが見えず、まだまだ続いている。中国の医療従事者は危機が去った後も『うつ』状態なのだ。現場はそこまで追い込まれている。日本ではそこまで切迫した地域は限られていると思うが、東京や大阪の中核病院はその一つだった。彼らは強い精神力と体力で第1波は乗り越えてくれたが、第2波、第3波まで彼らがもってくれるかどうかは分からない。これは知っておいてほしい。

 次図は神奈川県の同様の図。
神奈川県.png
神奈川県は直近1週間で院内感染によるクラスターが複数発生していて、入院患者の減少が鈍っている。ここも5月中に医療体制が正常化するのは難しいだろう。ニュースによると、横浜市の病院ではタブレットだかデバイスの消毒ができていなかったり防護服の脱ぎ着の際に髪の毛を触ったりしたことが原因で院内感染が収まっていなかったという。市の保健当局の指導が不十分だったのか?この期に及んでそんな体たらくとは情けない。
 そもそもは一般病棟に感染者を混ぜること自体が間違っているのである。病棟の入院患者を全員転院させて病棟丸ごと感染者用とできなかった行政と医師会の調整力不足の責任を痛感してもらわなければならない。この「コロナの時代」にあっては患者の入院先が自宅から近かろうと遠かろうとどうせ面会などできないし差し入れもできないのだから、(言い方は悪いが)患者を遠くの安全な場所に退避転院させる方が正しい判断になるのである。6月からは藤沢に建てている115床のコロナ専用病院や相模原の廃院となった最大300床の元大学病院などで感染者を隔離した状態で集中管理できるようになるので、今後は院内感染の神奈川という汚名ははらせるだろう。全ての都道府県がそうしなければいけない。コロナウィルスとの戦いはまだ1年は続くのだから。

 次図は埼玉県の同様の図。
埼玉県.png
埼玉県は5月になって順調に入院者数を減らしていて、このままいけば早ければ(来週中には)医療体制が正常化する。素晴らしい。

 次図は千葉県の同様の図。
千葉県.png
千葉県も5月に入院者数を順調に減らしてきており、5月中には第2種感染症指定病院の病床数を下回り、医療体制は正常化できそうだ。

 もっとも正常化といっても当分は医療関係者・介護関係者は戦争状態には違いない。
PCR検査のために街の診療所の医者や歯科医が駆り出されることもあるだろうし、医学生が駆り出されることもあるだろう。アルバイト先がなくて困っている学生を使ってでもPCR検査は増やしていかねばならない。抗体検査や抗原検査なども海外では行われているが、正直に言ってやることに反対はしないが、何かの証明や免罪符になるわけでもない。十分な研究を経ないと「分からない」ということが分かるだけである。風邪のコロナウィルスの抗体と識別する精度は当分分からないし、どれほどの数の抗体を持っていれば大丈夫といえるかというクライテリア(基準)は世界中探してもどこにもない。

 次は石川県の入院者数の推移と今後の予測である。
政府とお抱え専門家がなぜ石川県と富山県に注意しないのか、特段の事由を筆者は知らないが、両県ともまだ医療体制は正常化していない。
石川県.png
石川県も5月は順調に入院患者数を減らしてきているが、まだ第2種感染症指定病院の病床数18を大きく上回っており(5月20日時点では72人)、5月中に医療体制が正常化するかどうかは難しそうだ。
 こういう医療キャパシティの小さい県であるのに早々となんとか宣言を解除したのはどういうことなのだろうか?地元医師会は困惑して県知事にちょっと待ってくれよと掛け合っているだろう。石川県は金沢があり輪島があり、伝統工芸品も多く、観光が重要な産業ではある。しかし自粛を緩和したからといって都会からまた大勢観光客が押し掛けるだろうか?いや、今はコロナの時代だ。国民の大多数がワクチンを接種するまで以前の生活は戻らない。遠方の都会の人々は飛行機や電車やバスに長時間乗ること自体を怖がるだろうし、地元の人々も観光客を恐れるだろう。来てほしいのに。
 むしろ感染症指定病院の病床数が少なすぎたことを反省して今から倍ぐらいに増床しておくべきだ。沖縄ですら28あるのだから。

 次図は富山県の同様の図。
富山県.png
富山県は5月20日時点で入院数(入院調整中を含む)38であり、5月中に第2種感染症指定病院の病床数20にたどり着ける可能性は十分ある。そうなってほしいものだ。それでも指定病院の病床数が20は少なすぎた。ここも増床しておくことを強くお勧めする。

 次図は大阪府の同様の図。
大阪府.png
 ここは知事が早々と自粛を解除したし、政府のなんとか宣言も解除されたが、ご覧の通り病床は埋まったままだ。それも感染症指定病院でない一般病院の病床が150も使われてだ(5月20日時点)。こんな状態でよく地元医師会は知事の要請を受け入れたと思う。グラフを見る限り医療体制が正常化するのは6月半ば以降と想像される。地元経済界からの突き上げが強かったのかもしれない。外出自粛を解除し、街に出て解除された店で飲み食いしてほしいという事だろう。気持ちは分かる。知事はどうにかして地元の医師会を説得したのだろう。そうでなければ<選挙の時を楽しみにしておけよ>だ。

 経済界といっても特に厳しいのは特に外食店や小売店、デパート、旅館、ホテル、パチンコ店、ゲームセンターなどのサービス業だろう。大阪府でも製造業よりサービス業の方が比率が高いのかもしれない。自粛解除したら近畿圏の客が大坂に以前と同じように大勢遊びに来てくれるだろうか?中国や台湾、韓国などの終息した国の観光客を呼んだら来るだろうか?小さな商店の店主や従業員は来てほしいだろう。しかし今はコロナの時代だ。以前のような日常は当分戻ってこない
 たこ焼きを店頭で売る分にはあまり問題はないが、お好み焼きや串カツのような飲食店は客同士の間隔を1.5m以上あけられるのだろうか?コロナ対応で正しく営業しようとすると店に入れる客の数は3分の1から4分の1ほどにしなければならないはずだ。それはカラオケでもスポーツジムでも学習塾でも同じだ。そしてそれでは商売が成り立つはずがないと予想する。2か月も息を止めて死にかかっていたのだから、自粛解除で思いきり息を吸いたいだろうが、コロナの時代では以前の3分の1しか息をしてはいけないのだ。苦しいのは大阪の店だけではない。全国どこも同じだ。店主だけではない。パートのおばちゃんもアルバイトの学生も収入がなくて困っている。今月の残金が5000円ちょっとしかなくて毎日もやししか食べられないという学生さえいるという。悲惨な話だ。

 しかも、1、2か月息を止めるのは今回だけという保証はない。第2波、第3波が来ないはずがない。1年のうち1か月半だけ息を止めるのでも死にそうなのに、息継ぎの期間も3分の1しか息をしてはいけない。そして間違いなく次の秋・冬には大きな第2波が来てまた息を止めなければいけない。その前にも地域によっては早い第2波が来るかもしれない。そんな事態であればどんな一流ホテルでも乗り切れないかもしれないし、ましてや町の商店や食い物屋、飲み屋はいわんやだ。無理に決まっている。
 つまり筆者の考えでは自粛期間を1週間2週間早くしようが遅くしようが年内にはほとんど潰れてしまうことを考える必要があるという事だ。

 日本の産業の3割ほどが規模の小さいサービス業らしい。
 このやり方では、これらの大半はこの1年の内に潰れてしまうのではないか?
 それを防ぐためにはさらに膨大な借金(国債発行)をしてこの3割の産業が潰れないように賃金保証しなければならない。
 既に10兆円の巨額の借金を作ったがその上乗せでより大きな借金をしなければならない。
 そうまでして我々は何を守ろうとしているのだろうか?
 その膨大な金(すべては国民の税金だ)は何の代償なのだろうか? 
「居酒屋で仲間と酒を飲みながら気晴らしする」「カラオケで騒ぐ」「スポーツジムで運動不足を解消する」というささやかな庶民の日常の楽しみが許されなくなった。
 本当にそうなのだろうか?これは正しい方法ではないのではないか?

 この疑問については次の記事で考えることにする。

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