台湾侵攻シナリオの再考(1)

-シナリオの必要性-

1.米国にとっての台湾(中華民国)の安全保障上の価値
 習近平は祖国統一(台湾併合)を次の世代に引き継がない(自分の代で行う)と宣言している
このところ中国による台湾融和政策は裏目に出て、台湾の多くの人が中華人民共和国への統合を望んでいない。
このことから中国人民解放軍(以下PLAと略す)の第一優先は台湾進攻とみられる。

中国がこれ以上経済成長して経済上、IT技術上、軍事上の覇権を米国から奪うのを阻止するために、米国は貿易戦争を開始したが、それが功を奏して中国国内で若者の失業・未婚問題、農村の貧困問題、環境問題などの不満が高まり、一帯一路にも失敗しつつある習近平の指導力が問われる事態になってくると、習近平は国民の関心を外に向けさせる策に出ると考えられる。

2020年と、明確に期日を示す記事まである。
日経ビジネス 2018年1月17日 福島 香織

この記事では<2020年というのは、中国が二つの100年計画の一つ「小康社会の全面的実現」目標の期限である建党100周年の2021年より一年前であり、もしこの時点で台湾統一が実現できれば、習近平政権にとっては長期独裁を全党および人民に納得させるだけの効果を持つ歴史的偉業となる。>と根拠を示している。
もう一つの100年計画とはChina2049だ※
時期を明確にするために多大な努力をする必要はないが、その危機は迫っていると考えて備えておくべきだろう。
『China2049』2015年マイク・ピルズベリー著(原題:The Hundred-Year Marathon)
 中国歴代首脳が引き継いできた「100年後に恨みを晴らす」という中国の隠された戦略を暴いた中国研究の専門家による著書。
 今や米国では政府、共和党、民主党に広く浸透していおり、米国の外交の基本路線の根幹になっている。
 現在展開されている米中貿易戦争はトランプのやり方ではあるが、この著作に基づいた米国の行動で、議会も全面的に支持している。
 政治・経済の世界情勢を読む上で必読の書。


 台湾が攻撃を受けたとしても、台湾には米軍基地があるわけではなく、現状米軍が攻撃を受けたとはみなせない。
トランプ政権になって台湾旅行法など急速に両国間は改善されつつあるが、米国は中華民国・台湾を公式に中華人民共和国と異なる「国」として認知していないので、台湾は「同盟国」という地位にはない。
しかし、米国在台協会台北事務所の警護のために海兵隊が駐屯していたら解釈の余地がでてくるかもしれない。なんといっても台湾と日本は米国にとって安全保障上の最終防衛ラインである。
沖縄~南西諸島~台湾~フィリピンという島々の間の海峡は比較的狭いので、PLAの原潜の出入りを監視することができている。
しかし、台湾が中国の手に渡れば、PLAの原潜が広い太平洋を自由に動き回れるようになり、米軍は核戦略上、敗北する。

グアムとハワイは広い太平洋の孤島でありPLAの動きを監視しようがなく、防衛ラインにならないからだ。
つまり、沖縄~台湾~フィリピンは米国にとって対中国の最終防衛ラインとなる。
第一列島線と台湾.jpg

逆に中国から見れば、台湾とその周辺の海域を確保しなければ、米国を打倒して覇権を打ち立てる百年計画(China2049)は実現しないだろう。
中国から見た海洋進出の障害.JPG

 トランプ大統領は6月21日イラン攻撃の直前10分でストップをかけたという。120億円もする無人偵察機を撃墜され、米軍はイラン攻撃作戦に出る寸前だったが、戦死者150人の見積りは無人偵察機の対価として大きすぎると判断したようだ。
150人の被害予想は大きい。米軍は政権転覆の作戦を立てたらしい。
米国はイランがウラン濃縮を進めていてイスラエルを攻撃する準備をしていることを危惧しているので、ボルトン補佐官やポンペイオ国務長官は手を下すなら今のうちと考えているのかもしれない。

しかし、イランは北朝鮮と違って大国であり、軍事力もあり地形も複雑で、政権転覆を目指す戦いは5年10年を要すると予想される。トランプの望むような、選挙でアピールできる短期間的に成果を上げることは不可能だし、対中国と二つ同時の戦争はできない。

一方、台湾は米国本土の最終防衛ラインであり、米国は黙って見ているわけにはいかない。中東のイランと異なり、対中国と全面的に対峙する米国にとって台湾の安全保障上の価値は非常に高い。もし台湾で事が起きれば、米国は北朝鮮やイランを棚に上げて台湾に注力せざるを得ないだろう。

2.中国の異常なミサイル数の保有、攻撃型艦船の建造、米中の軍事力バランスの逆転
米国・ロシアがINF条約で禁止している射程500-5,500kmの弾道ミサイルを保有できないでいた間、中国はINFに拘束されず、せっせとこのレンジのミサイルを開発し、ため込んできた。その保有数は2000基以上と言われ、日本、韓国、台湾の主要基地、主要都市に対して十分な飽和攻撃を加える能力に達している。
PLAの日本に対するミサイル攻撃態勢図.jpg

ここ10年間でミサイル駆逐艦、攻撃型通常潜水艦、フリーゲート艦を大量に建造し、イージス艦の数でも自衛隊と在日米海軍の保有数をすでに上回っている。
  (ロイター2019年4月25日)
  (朝日Globe 2019年2月28日)
 (ロイター2019年4月30日)
 (RecordChina2019年2月23日)
  (漢和防務評論20190209)

挑戦される米国も急遽新型ミサイルに入れ替え対策に乗り出している
  (TOKYO EXPRESS 19年3月4日)

今まで陸軍中心の戦争しか経験していない中国がなぜここまで海軍力を増強するのか?
目先の目的は誰が見ても台湾だろう。そしてより長期的には、2049年までに米国と対峙し米国の覇権を破ることだろう。太平洋での米国の覇権を破るためには日本~南西諸島~台湾~フィリピンという「第1列島線」という米国の防衛線を破らなければならない。
長距離を航海する空母や巡洋艦はまだ必要な段階ではなく、それがここ10年に建造している艦船の種類と数にも表れているとみられる。

3.Newsweek記事のシナリオの重大な欠点
今回筆者が独自にシナリオを検討する発端になったのは、NewsWeekの『台湾は人民解放軍の上陸作戦に勝てる』という記事だ。米タフツ大学の政治学者マイケル・ベックリーによるものと、シンクタンク「プロジェクト2049研究所」フェローのイアン・イーストンの著書『中国侵攻の脅威/台湾防衛とアジアにおけるアメリカの戦略』に基づいているという。
  Newsweek2018年10月4日記事
それは米国が参戦せず台湾が単独で戦った時のシナリオだが、台湾は単独で中国と戦っても最終的にゲリラ戦で勝てるというシナリオだ。

しかしこのシナリオで忘れられているのが、台湾のダメージの大きさだ。
特に中国人民解放軍(以下PLAと略す)にS-400が配備されたとなると、事態は極めて深刻になる。
Newsweekの記事の2か月後に中国のS-400購入が発表されたので、記事が参照してる二人の専門家の検討にはS-400のインパクトが考慮されていないのは仕方がない。

台湾側は最初のPLAの攻撃で空港、戦闘機と制空権を失うだけでなく、S-400の鉄壁な防御のために、対岸の巡航ミサイル発射台やミサイル巡洋艦に対してほとんどダメージを与えることができなくなり、PLAの巡航ミサイルと戦闘機にやられっぱなしになる。
台湾軍にはイージス艦もなく、防空システムといえるものがないからだ。
台北市、台中市、高尾市、花蓮市ほか全ての都市は破壊されてしまう。官庁、役所、通信施設、浄水場、下水処理場、発電所、道路、橋梁といった多くの社会インフラが破壊されてしまうと、仮にPLAの1回目の上陸部隊をゲリラ戦で打ち負かせたとしても、国として機能できなくなる。

人は半分は生き残るかもしれないが、そのように大きなダメージを受けてしまうと、仮にPLAの最初の上陸部隊をゲリラ戦で撃退できたとしても、半年後そのまた半年後に上陸してくるPLAの大群に抵抗する気力もなくなってしまうだろう(大挙して上陸可能な時期は4月と10月の8週間に限定される)。

これまでの漢民族の他民族への残虐な侵略の歴史を見ると、学校や病院も破壊して人口を減らし、最終的に生き残りは外に追い出すか収容所に入れてしまうようなことを目指しているかもしれない。
彼らにとっては祖国統一は漢民族の領土が重要なのであって、他民族の権利は考慮に値しないことだからだ。

中国政府が「まいりました。負けました」といって終戦しない限り、PLAは何度でも押し寄せてくる
中国は台湾がタマギレになって必ず負けると考えているので、1回や2回上陸作戦が失敗に終わっても、頓着せず上陸作戦を継続してくるだろう。時間がどれだけかかろうと、自国の兵隊が何人死のうと、あくまで物量で勝負してくる。
上陸に大量の民兵と民間船を使ってくるやり口といい、2010年代に入ってから建造された大量の艦船(米軍の二つの太平洋艦隊を上回る)といい、それを物語っている。

台湾のダメージを最小に抑えて台湾が戦いを継続できる体制を維持するためには、米国の力がどうしても必要になる
米軍の力でS-400、S-300という強力な防空システムを撃破することができれば、対岸の巡航ミサイルを削減し、空爆を抑えることができる。それは次の「中国を降伏させる作戦」につながる。
戦死者の命は帰らないので、できるだけ接近戦は避け、中長距離ミサイルを使う必要がある。
米軍が参戦することで多大な費用が掛かるが、それは勝ったときに中国に賠償請求すればいいだけのことだ。
PLAの防御壁を破りPLAの戦闘力を削げれば、台湾という安全保障の要所を死守することができ、かつ米国に挑戦しようとしている中国の国力を落とすことができる。
中国の国力を落とすためには、できるだけ多くのPLAの艦船を沈め、武器弾薬を爆破し、海軍国として米軍に立ち向かう事は無理だと分からせるダメージを与えることが重要だ。

上のNewsWeek記事にはどうやって終戦するかというシナリオがない。それが致命的な欠点だ
それがないと、何度も何度もPLAの大群が上陸してくる恐怖の無限ループに陥り、持久戦の結果、台湾は負けてしまう。
中国に「まいりました。負けました」と言わせる「中国を降伏させる作戦」が必要となる。

このシリーズでは台湾が致命的なダメージを受けずに終戦に持ち込むシナリオを検討する
そのためにはまずPLAの防御壁S-400防空システムを無能化する必要がある。
その後、PLAの空港を破壊して爆撃機を飛来させられないようにし、対岸の巡航ミサイルの発射源を叩かなければならない。



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