新型コロナウィルス これまでの知見の整理2A

  BSで新型コロナウィルスに関するNHKスペシャルの再放送をしたのを見て、これまでの知見で書き漏らしていた点があったのに気づいたので追記しておく。「これまでの知見2」の追記だが、長くなったので記事を分けておく。


4.インターフェロン抑制という厄介な性質
 COVID-19の厄介な性質の一つに「無症状感染者が感染を広げる」というものがある。
 通常ウィルスや菌が細胞に感染すると、侵入された細胞は血液中にインターフェロンという警告物質を血液中に放出して自然免疫系の活性化を促し、好中球などの貪食細胞がインターフェロンの発生源にたどり着いて外敵を食べ、侵入された細胞を貪食する、といった免疫活動が始まる。自然免疫系の活動が活発になると体温も上昇し、体全体がウィルス攻撃態勢に入る。

 しかしSARS-CoV-2ウィルスには厄介な遺伝子があって、侵入した細胞のインターフェロン放出を1/10に抑制することができてしまう。そのため、自然免疫系が活性化せず、体温も上昇せず自覚症状がないままウィルスが増え続け、ウィルスが飛沫に入ってまき散らされるという事態が起こる。これはこれまでのウィルスにない恐るべき能力だ(SARSウィルスは同じだったはずだが)。無症状感染者による感染はこうして起こると考えられる。
 遺伝子ORF3aにも変異が起こっていてベネズエラではインターフェロンの放出量を1/20に抑制するようなウィルスが発見されている。このウィルスに感染すると無症状から急速に重症化するらしい。しかし筆者の考えではこの変異ウィルスは数を増やせないだろう。飛沫で他者に感染させる期間が短くなるからだ。
 一つの細胞に侵入したウィルスは1日で千倍にも増殖できるという。感染してから4,5日たてば飛沫に十分な量のウィルスをまき散らすほどに増えているという計算になるだろう。

 ただここで分からない点が出てくる。無症状感染者が症状が出ないまま回復する/陰性化するという例も多いが、その場合体の中で何が起こっているのだろうか? 自然免疫系が活動せずにウィルスをなくすことなどできないはずだが?ウィルスがあるウィルス量を超えてインターフェロンが十分に出回った段階で自然免疫系が活動をはじめ、半日、1日というアッという時間の内にウィルスを撃退してしまったということだろうか?若い人(10代~30代ぐらい)では自然免疫系が強い(量が多い/効率的)のでそれも可能という事なのか?
 無症状から陰性化するケースではおよそ2.3週間で陰性化する。抗体の産生は感染後3週間後から始まるといわれているので、この期間ではウィルスへの攻撃は自然免疫系やキラーT細胞によると考えられる。そうであるとすると、ウィルスは少なくとも肺の中では相当増えていてもおかしくない。であるなら、発熱がほとんど出ずに回復したとしても、肺機能は相当程度のダメージを受けていることになる。であれば陰性化した無症状感染者の後遺症(息苦しさ、めまいなど)はかなりひどいものになるので、もっと表に出てきていておかしくないのに、あまり報じられていない。これは不思議だ

 以下は仮説にすぎないが、一つの答えは2・3週間で陰性化した無症状感染者のウィルスは増殖力の低い弱毒性のウィルスだったということだ。ウィルスが1日で千倍になるなら5日目には10の12乗倍になってしまうが、そうはならず、5日間で千倍程度にしか増殖しなかったため、陰性化後も重度の呼吸器系の後遺症を持たずに済んだのかもしれない。4月5月の時点ですでにそういう遺伝子型のウィルスがかなりあったのかもしれない。
 もう一つの可能性としては、自然免疫系が十分に活動しても体温上昇しない人が一定数いるという仮説もありえるが、それでは風邪やインフルエンザで発熱しない人が4割5割もいるという話になってしまう。ちょっと無理な話だろう。
 もう一つ悲劇的な可能性も否定できない。PCR検査でSARS-CoV-2でないただのコロナウィルス(風邪を起こすものもそうでないものもある)またはそれに類似するウィルスをSARS-CoV-2として取り上げてしまっている可能性だ。PCR検査自体の制度がそれほど良くないので、PCR検査で陽性と出てもSARS-CoV-2でないウィルスをひっかけてしまっている可能性は十分ある。それがどれぐらいの割合なのか、きちんと調べられていないので現状「分からない」。そんなものを隔離したり入院させたりするのは全く無意味だが、現時点ではほかに判定方法がない。合わせて抗原検査をやってもしょせん抗原はウィルスの断片に過ぎないのでSARS-Cov-2ウィルスと断定することはできない。これが今の検査技術の限界である。

 繰り返しになるが、たんぱく質は温度にセンシティブなので北半球で高温期に入ってACE2レセプターに取りつくスパイクたんぱく質(S,N,E,Wの4種類と言われる)が変形してレセプター(鍵穴)に対してリガント(鍵)として機能しにくくなっているかもしれない。あるいは侵入した細胞内で千個の分身を作る能力が落ちているかもしれない。遺伝子変異でなく、そういうウィルス変異が起こっているなら、今後秋冬に再流行したとしても、タンパク質の変形が元に戻らなければ弱毒化したままで流行するのでかなり安心できるのだが、果たしてどうなのだろうか?


5.抗原提示タンパク質の免疫系の地域・民族による違いについて
 重症化するかしないかは感染後2・3週間で決まるように思われる。そこまでの決着を左右するのはインターフェロンという警告物質とマクロファージなどの貪食細胞の自然免疫系であって抗体を産生するB細胞やB細胞に抗原を提示するT細胞などの獲得免疫系ではない。獲得免疫系はアフリカではマラリア線虫に対する抗体が多いなど地域差が大きいが自然免疫系でも地域差・民族による差があるらしい。
 菌やウィルスに侵入された細胞は抗原(菌やウィルスの一部)を細胞表面にMHCクラス1という腕に載せて抗原提示する。また菌やウィルスを食べた貪食細胞は食べたものの一部をMHCクラス2という腕に載せて抗原提示する。獲得免疫系のキラーT細胞は貪食西郷から抗原を教わり、同じ光源を提示している(侵入された)細胞を探して細胞ごと攻撃する。
 この抗原提示の腕に相当するMHCクラス1、クラス2のタンパク質にもSARS-CoV-2ウィルスの断片をうまく提示できるものとできない者があり、それが地域・民族によって差がある可能性があるという。そうであるとすると西ヨーロッパや米国で重症者が多く、東アジア、東南アジアで少ないということの説明がつく可能性もあるだろう。

6.血栓症のメカニズムについて
 これまで心臓疾患や手先足先の血栓などの症状は、キラーT細胞の血管内皮細胞に侵入したウィルスへのサイトカイン攻撃によって血管に穴があき、それを埋めるために血小板が大量に重なって血栓ができるものと筆者は考えていたが、そうではないらしい。インターロイキンなどのサイトカインが大量に放出されると敵を食べるために集まっていた大量の食細胞が自爆(アポトーシス)して自分の中身をまき散らし、そのねばねば成分によって血栓ができるという様子が顕微鏡撮影で確認された。
 なぜサイトカインストームが起きると食細胞が大量に自爆するのか、分かっていない。どういう機序でサイトカインストームが起こるのか、どういう人がどういう条件でサイトカインストームになるのか、分かっていない。
 インフルエンザで亡くなる人の中にはサイトカインストームもあると考えられるが、サイトカインストームがこれだけ取り上げられた病気はCOVID-19が初めてであり、それについては誰も分かっていないのだ。

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