日本はスウェーデンを参考に集団免疫を目指すべき

 スウェーデン・カロリンスカヤ大学の宮川医師によるスウェーデンの感染状況の報告(『スウェーデン式新型コロナ対策の「真実」(前編後編))と、7月17日スウェーデン公衆衛生局の「集団免疫をほぼ獲得したとみられる」という発表やそれに関連したT細胞の交差免疫に関する調査・検討を二つの記事に分割して書いた(『スウェーデン報告の衝撃 1。優先順位の正しさ』『スウェーデン報告の衝撃 2.集団免疫獲得の可能性』)が、我ながら冗長になってしまった。

日本が参考にすべき部分が多々あるため、ここで要約しておく。

1.スウェーデンの感染対策
 宮川医師によるとスウェーデンは憲法上個人の自由を束縛できない中で最低限の規制を行った。
 ・50人以上の集会の禁止
 ・(親族の)介護施設訪問の禁止
 また感染対策として3つの指針を上げた
 ・社会的距離(social distancing)を取る
 ・少しでも症状があれば自宅療養する
 ・リモートワークを推進する
 ・マスクは推奨されなかった
 違反者をどうしたか分からないが、国民は政府を信頼しておおむね従ったという。

 宮川医師によればスウェーデンは部分的ロックダウンというべき状況だという。この辺は法律で縛り切れない日本に近いものがある。
 ・小中学校・幼稚園は開校・開園し続けた
  ➡教育、医療、介護の現場の働き手を失うことはなく、基盤的な経済は回り続けている
 ・高校大学に関してはオンライン授業が推奨された
 感染拡大が先行した中国、イタリアでも休校し、日本をはじめ多くの国が学校を休校しオンライン授業としたが、小中学校・幼稚園を開校・開園し続けたのはスウェーデン政府の大英断だった。十代、二十代では重症化しない、クラスターが発生しないという知見に基づいたのは正しかった。日本でも学校・幼稚園・保育園を開校・開園すべしという声は医療関係者では多かった。

 GDPがマイナスに転落したが、スウェーデンでは貿易がGDPの6割を占めるため、EU内でのヒトやモノの流通が復活すれば経済的なダメージを最小限にとどめられる可能性が残っている。
 飲食店などへの休業命令、休業要請がなかったため、報告にはなかったが失業者はほとんど出ていないと予想される。


2.スウェーデンの感染状況
 次図は筆者によるスウェーデンの感染者発生数、死者数、退院/陰性化数の筆者による推移図(値はそれぞれ5日間の移動平均、元データはWorldometerの日々のデータ)。
スウェーデンの感染拡大の推移.png
 3月後半から5月半ばにかけて死者が感染発生数の1割を超えている。スウェーデンでは介護施設と医療の連携が悪く、介護施設の高齢者が多く亡くなった。これはイギリス、イタリア、スペイン、フランスでも同じことが起こっている。これらの国とスウェーデンが異なるのはスウェーデンには貧困の外国人労働者のスラム街のような密集地がないため、クラスターは介護施設のみにとどまったという事だ。
 スウェーデンの人口百万人当たりの死者数は8月10日時点で571人でこれは世界で8番目に悪い数字である。

 宮川医師によると5800人にせまる死者の9割は70歳以上の高齢者で、その8割は基礎疾患のある要介護者だったという。
スウェーデンの死亡者年齢分布.JPG
 スウェーデンではCOVID-19重症患者のICU治療に際し、トリアージを行った。指針では、80歳以上(生物学的年齢)の患者、70歳代で1つ以上の臓器障害を有する患者、60歳代で2つ以上の臓器障害を有する患者はICU治療の適応外とした。これは海外からの非難もあったが、私立病院が少なく医療キャパシティが小さい国では仕方がないもので、国民はこの指針を支持したという。

 筆者から見ると70歳以上の高齢者に対して余計な医療費をかけずに済ませられたのは財政的にも正しい成果だ。
 逆に言えば70歳未満の国民は医療によって守られたということだ。


3.スウェーデンでの集団免疫の獲得の可能性
 上の感染状況推移図に見るように、スウェーデンでは7月から感染が終息方向にあるように見える。特に感染対策を強化したわけでもないのに感染終息傾向にあるのは、ウィルスが勝手に感染力を失ったり消失したりしたのでなければ、人々が感染しなくなった➡人々に免疫ができた➡集団免疫が形成されつつある、と考えることができる

 スウェーデンの公衆衛生局の発表は、首都ストックホルムにおける住民の新型コロナ抗体獲得率が17.5%~20%に達し、さらに、「T細胞」を介した免疫とあわせると、40%近くが免疫を獲得していると推定されるとしたものだ。当初集団免疫には免疫獲得率が60~70%必要と見られていたが、その後の議論で40%でも十分という結論に達したという。

 ここで発表文中の『「T細胞」を介した免疫』については、前回ブログ記事『スウェーデン報告の衝撃 2.集団免疫獲得の可能性』の『交差免疫に関する補足的説明』を参照いただきたい。

 スウェーデン公衆衛生局は抗体保有率とT細胞の交差免疫を合わせて約40%としたが、新型コロナウィルスに対する抗体は2か月で激減するという複数の報告から、抗体保有率は感染縮小していけば減少していくので、抗体で集団免疫の状態を維持するのは難しく、T細胞の交差免疫だけで集団免疫を獲得するにはさらに時間を要するのではないかと筆者は予想する。

 集団免疫が獲得できたかどうかはEU内の人の流通が復活すれば判明する。抗体による免疫と違ってT細胞の交差免疫による免疫ではウィルスの多少の変異にも対応できると予想されるためだ。


4.日本でも集団免疫獲得は可能ではないか?
 新型コロナでない風邪などのコロナウィルスに以前感染したことがある人はキラーT細胞がそれを記憶していて新型ウィルスを見つけても攻撃してくれる可能性は十分にある。西ヨーロッパ、北米、中南米に比べてアジアではひろく重症化率が低く死亡率が低い要因(京大・中山教授はファクターXと命名している)の一つに、このただのコロナウィルスの感染記憶によるT細胞の交差免疫の働きがある可能性は十分にある。

 日本では元々西欧、北米より重症化率、死亡率が低いうえに、高温期に入ってウィルスは弱毒化している
次図は日本の感染状況の筆者による推移図(元データはWorldometerの日々のデータ)。第一波では感染発生のピーク(青線)から12日遅れで死者数(オレンジ線)も増えてピークがあったが、6月後半以降感染者は発生し続けているが死者は増加していない。第一波では感染者の回復(緑線)が遅く発生のピークから20日~30日後に退院者のピークが来ているが、第二波では感染発生のピークに1週間ほど遅れで退院/陰性化(緑線)している。つまり大半は重症せずに1週間程度で陰性化しているという事だ。
日本の感染状況.png

➡弱毒化に関しては日本、米国、米国内の各州、オーストラリア、ヨーロッパの国々の感染状況から検証したのでブログ記事『ウィルスの弱毒化の検証』を参照されたい。

筆者は感染しても無症状のまま陰性化できる今こそ、日本は集団免疫獲得に向かうべきと考える

 日本はスウェーデンやドイツ、韓国と異なりGDPに占める貿易の割合は3割と低い。
これは逆に外食、流通、観光、サービス業などの国内産業を止めることのダメージの方がGDPや失業率への影響が大きいことを意味する。
であるから、政府は『緊急事態宣言』を出して休業要請、外出自粛要請することはできるだけ避けるべきである。
医療キャパシティが危険水準に近づいたら自治体別に休業要請、外出自粛要請するのがいいだろう。

 ただし、70歳以上の高齢者、高血圧症、糖尿病、心疾患、ぜんそく以外の呼吸器系疾患、がんといった基礎疾患のある人、妊婦、は感染対策を厳重にして自己隔離して生活するよう、国が指針を示す必要がある
SARS-Cov-2ウィルスは母子感染することが判明している

 1週間で陰性化する程度の無症状感染者が増えているだけなのだから、70歳以上の高齢者と基礎疾患のある人、妊婦以外は必要以上に恐れることはない。今はそれよりは熱中症の方を恐れた方がいい。

各自治体は自宅静養/宿泊施設について市民に正しいマニュアル/ガイドラインを説明し、大量の隔離療養用宿泊施設を用意する必要がある。
一人暮らしの無症状感染者が買い物に出かけなくていいようサポートを用意できない場合は宿泊施設を提供する義務が出てくる。
沖縄で宿泊施設がパンクしたこともあり、これからは医療のキャパ(病床数)より宿泊施設のキャパが重要になってくる。
宿泊キャパシティを確保できた分だけPCR検査も大々的に増やしてゆけば問題は生じないだろう。
東京都や埼玉県など宿泊施設のキャパが足りない分を病院の病床を使って入院させるようなことをしていてはだめだ。
入院させるのは体温に関係なく酸素吸入が必要なSPO2 94以下の人、味覚嗅覚障害の人、手足の指先に血栓症が見られる人に限定した方がいい。

 別な観点の興味だが、無症状感染者が大量にいる今こそ、自宅静養者とその家族にはファビピラビル又はナファモスタットを投与して非投与群と比較対象試験をしてもらいたい。いずれもウィルスの増殖を抑える効果が期待されている薬だ。
効果があれば同居する家族のプレッシャーを相当減らすことができる。現場の医師や看護婦に予防薬として使う事を推奨できることになる。

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